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ファッション販売2000年2月号『“ユニクロ”vs“GAP”の全面対決が招く淘汰の日』(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔突出する二強2000年8月期は18.8%増の1,320億円、2001年8月期では13.6%増の1,500億円を予定しているが、最近の勢いから見れば超控えめな見通しで、大幅な上方修正が期待される。営業利益率も98年8月期の7.2%(経常利益率は7.6%)から99年8月期には12.9%(同12.8%)と急上昇し、今期は経常利益率13%を見込んでいる。 メジャー化とともに客層も急激に拡がって「国民的カジュアルブランド」となる一方、“ユニクロ”の「最低価格」はカジュアル市場のデフェクト・スタンダードとなって業界全体を震撼させている。極端に絞り込まれ定形化された“ユニクロ”の商品は今秋から実験がスタートしたカタログ通販はもちろん、eビジネスにも最適で、客層の拡がりとともにさらなる成長をもたらすだろう。 一方、米国カジュアル市場を制覇してグローバル戦略を押し進める“GAP”は英国と並んで日本でも急拡大しており、11月3日には原宿にフルサイズの旗艦店を開設。95年9月の一号店開設から99年末には28箇所53店に達し、2000年中には100店に達する勢いだ。店舗規模(複合店)も急ピッチで拡大しており、初期の700平米級から最近は2,000平米前後になり、2000年以降は2,500〜3,000平米級をめざすと発表されている。 販売効率も99年に入って急上昇しており、既存店は二桁増で推移。月坪効率も郊外SC店で30万円台から40万円台にアップ、一部の都心店では60〜80万円台に達していると推定される。原宿旗艦店の開設を契機に大仕掛けなキャンペーンも始まっており、一段と勢いがつきそうだ。 ギャップ社そのものは年商一兆円級のグローバル・カンパニーであり、“ギャップ”“ギャップキッズ”のほか“バナナリパブリック”“オールドネイビー・クロージング”計2,809店舗(99年10月末)を米国の他、カナダ、英国、フランス、ドイツ、日本に展開している。99年1月期の売上は前期比39%増の90.5億ドル(前期も23.2%増)と一兆円級に達してなお急成長を続けており、営業利益率も14.8%とファーストリテイリングをさらに上回る。 海外での売上は全社の一割にすぎないが、英国と日本で好調に拡大しており、ギャップジャパンの年商は2000年1月期で推定250億円、2001年1月期では500億円に迫ると推察される。おそらく、その段階で日本での売上は海外市場で最大となるだろう。中期的な目標は三年後の一千億円だが、最終的には“オールドネイビー・クロージング”を軸に三千億円を狙っていると考えられる。 カジュアル市場で突出した強さを見せつける両者だが、「高い品質のベーシックカジュアルを市場最低価格で継続的に供給する」“ユニクロ”と「シンプル・グッドテイストなアメリカンカジュアルでライフスタイルを売る」グローバル・ブランドビジネスの“GAP”とでは価格も顧客も異なる。現在は直接的に競合する訳ではないが、やがてはカジュアル市場の覇権を争って全面対決することになるのだ。 “ユニクロ” vs “GAP”の全面対決が迫る“ユニクロ”は五年後に年商三千億円を計画し、それを達成した段階で海外市場に進出することを構想している。一方で“GAP”は日本市場で三年後に年商一千億円を計画し、他の極東市場、とりわけ中国大陸での大規模な展開を狙っている。“ユニクロ”は生産拠点のほとんどを、“GAP”も生産拠点の過半を中国に依存しているから、両者の中国進出は必然的な課題と見なければならない。 所得水準の低い中国での展開は“ギャップ”ではなく“オールドネイビー・クロージング”を主力とするしかないギャップ社にとって、それをも下回る価格で高品質な商品をぶつけてくる“ユニクロ”は大きな脅威となりかねない。“ユニクロ”が日本市場で三千億円に達して海外進出を始めれば、それは現実の脅威となるから、そうなる前に“ユニクロ”を叩いて成長に歯止めをかけんとするのは当然の戦略だ。 “ギャップ”業態を日本市場で一千億円に拡張するのに“ユニクロ”は大きな阻害要因とはならないだろうが、“オールドネイビー・クロージング”を本格投入して三千億円を狙う段階では直接的なライバルとなるし、“ユニクロ”のさらなる成長を許してしまえば中国戦略の障害となってしまう。おそらく、ギャップ社は2000年秋、遅くとも2001年の春から“オールドネイビー・クロージング”の大量展開に踏み切り、“ユニクロ”の圧殺に全力を挙げてとりかかるに違いない。私がドナルド・フィッシャーなら、必ずそうする。 “ユニクロ”vs“GAP”の全面対決が現実となった時、果たしてどのような展開となるのか、両者の実力を占ってみよう。 両者の実力差と勝敗予測商品の価値感については、ボトムスでは“オールドネイビー・クロージング”が大きくリード、シャツでは“ユニクロ”が優位と考えられるが、カットソーやアウターでは“オールドネイビー・クロージング”が優位にあると考えられる。本誌一月号の本間京子氏のレポートでは“ユニクロ”のフリース商品が高く評価されていたが、氏のチェックにはパターン評価が欠けている。“ユニクロ”の商品は素材や縫製では目立った遜色は無くなったが、ブランド商品に較べてのパターンとグレーディングの粗さはまだ解決されておらず、カットソーやアウターではオイオイと言いたくなるレベルの商品も目立つ。 とは言え、“ユニクロ”はパターンナー等の商品開発要員を拡充してシャカ力で改善を急いでいるから、先は読みにくい。しかし、品揃えという点では、両者の性格は大きく異なる。 “オールドネイビー・クロージング”の詳しい品揃えデータは手許にないが、“ギャップ”(99秋冬のGap 0nlineより)と“ユニクロ”(99秋冬カタログより)のメンズ・ボトムスの品揃えを比較すると、展開型数で倍強、総SKU数では14倍もの差がある。型あたりの平均で“ギャップ”は148SKUを展開しているのに対して、“ユニクロ”は23SKUしか展開していないからだ。“ギャップ”は大半の型をウエスト×レングスでフルにサイズ展開しているのに対して“ユニクロ”はウエストのみのサイズ展開で、ウエストサイズの巾にも大差がある。しかも、倍強の差に収まっている型数にしても、“ユニクロ”がベーシックラインの素材展開で済ませているのに対して“ギャップ”はシルエットのバリェーションをしっかり揃えている。 すなわち、“ギャップ”や“オールドネイビー・クロージング”がジーンズストアから発展したボトム軸の品揃えであるのに対して、“ユニクロ”はボトムを軸としないカジュアルストアの品揃えなのだ。これはボトムの売上構成比率にもはっきり現れており、“ユニクロ”が98年8月期で11.7%、99年8月期も11.0%と低いのに対して、“ギャップ”はやや下がったとは言え30%以上を占めていると見られる(未公表)。ちなみに現在、一部のSCで“ユニクロ”と競合している“ライトオン”の99年8月期のボトムの売上構成比は33.3%と極めて高く、ジーンズストアの特色を現わしている。 “ユニクロ”と“オールドネイビー・クロージング”はトップスでは競合してもボトムスでは競争にならないと見るべきで、“ユニクロ”が価格を落として来た他業態(“IYベーシック”や“コックス”他、新手も続々出てくるはず)との競合に巻き込まれざるを得ないのに対して、強大なオリジナルのボトムス構成を軸とした“オールドネイビー・クロージング”は独走体制を確立する可能性が高い(NB軸のジーンズストアでは価格と補給で太刀打ち出来ない)。 ラインの拡充度とライフスタイル提案力という面でも、“ユニクロ”の劣勢は否めない。キッズの展開には桁違いの差があるし、フレグランスやボデイケアラインも“ユニクロ”にはまだ存在しない。“ユニクロ”が大きく展開している服飾雑貨ラインにしても、オリジナルデザインの感性は“ギャップ”や“オールドネイビー・クロージング”と較べる域にはない。つまり、品揃えトータルのライフスタイルや感性の提案力には大差があるというのが現実なのだ。 ストアのスケールとVMDのインパクトという面でも、“ギャップ”や“オールドネイビー・クロージング”のほうが突出している。“ユニクロ”が未だ500平米級に留まっているのに対して“ギャップ”や“オールドネイビー・クロージング”は2,000平米級かそれ以上のスケールに達しているし、陳列やレイアウト、照明、インストア・グラフィック等のビジュアル表現力には天と地ほどの大差がある。ワイデン&ケネディ社等の広告代理店を活用してプロモーション面では差を詰めていくにしても、「ストアを売る」総合力は一朝一夕に追いつけるものではない。 各店舗への配分や補給、物流といったロジスティックス面でも、両者の格差は大きい。ギャップ社ではSKU単位の需要予測システムに基づく本部主導の高精度な配分・補給体制が確立し、リージョナル毎の自社物流センター(日本と英国はまだ単一の依託センター)から店舗へ毎日デリバリーされている。それに対してファーストリテイリングの配分・補給体制は、急速に改善されているとは言え粗さが目立つ。 SKU単位の需要予測システムは開発途上だし(グレーディングの未統一も災いしているのでは)、本部主導のオペレーションを確立しきる前に店舗との役割分担にも迷いが出始めている。ファーストリテイリング社はオペレーションに関しては極端な機密主義で実体が掴みにくいが、デリバリーは過去のメーカーや商社依存との並行体制から依託物流センター(大阪と埼玉)一元制御体制へ切り替えつつあるようだ。並行体制下では初期配分はウィークリー、補充投入は不定期というパターンだったが、新体制では週三回デリバリーになるのではないか。計画を遥かに上回る売れ行きとは言え店頭では欠品が続出しており、新体制の稼動が急がれる。 オペレーションの組織体制についても、ギャップ社では軍隊的な「計画と制御の集権+実行の機能分担」型の組織が確立しているが(店舗の意志では一品も動かせないし、在庫検索も出来ないほど)、“ユニクロ”のそれはギャップ社の組織を理念的にはモデルとしていても遥かに簡素で、経営計画本部に商品計画の中枢から在庫コントロールまで計画と制御が集権され、営業本部に商品開発から調達、店舗運営までのすべてのラインが機能を分担して統合されている。単一業態であるだけに、この面ではむしろギャップ社より機動的かもしれない。 企業としての総合力、個々のシステムや技術、ストアを売るインパクトではギャップ社が何歩もリードしているから、“オールドネイビー・クロージング”の展開が阻害されることはないだろうが、価格インパクトと客層の広さで“ユニクロ”も圧殺されはしない。現在は500平米級に留まってストアを売るインパクトを欠く“ユニクロ”の店舗も、ラインロビングとVMD革新で急速にアップスケールしていく可能性も否定できない。となると、ギャップ社がよほど意図して圧殺を急がない限り、ファーストリテイリング社は次の臨界点に達してアジア戦略の障害となってしまう。 恐竜の戦いが旧態企業の絶滅を招く |