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ファッション販売2000年5月号

『ファイブフォックスに学ぶドメイン転換戦略』

(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


 

ファイブフォックスの収益革新

 価格(バリュー)競争と事業プロセス革新ウォーズが加速する中、勝ち組と負け組の格差が一段と鮮明になって来たアパレル業界。一握りに絞られた勝ち組でさえ、これまでの事業プロセスが壁を打って成長力、収益力を悪化させるケースが続出しているのが実態だ。その中で突出した収益力を見せ付けているのがファイブフォックスだ。
  99年10月決算は、売上高が前期比7.8%増の1225億500万円、営業利益高が16.4%増の170億2900万円、経常利益高が15.4%増の170億2800万円と大巾な増収益を達成。営業利益率は前期から1.0ポイント、経常利益率は0.9ポイント上昇してともに13.9%に達している。  収益性向上のポイントのひとつが不採算店舗の積極的なスクラップ&ビルド。97年度は127店を出店して183店を退店、98年度は98店を出店して153店を退店、そして99年度も140店を出店して124店を退店と、急ピッチなスクラップ&ビルドを断行。人件費を吸収出来ない小型店を悉く閉鎖した事で、既にほぼ全店が「年間売上1億円以上、販売スタッフ数4人以上」の基準を満たす好採算店になった。  二つめのポイントが全店に設置したPOSを活用した適確な配分とタイムリーな商品移動で、プロパー消化率(98年度77.0%→99年度78.6%)や粗利益率(同64.8%→67.2%)、商品回転(同7.1回転→7.7回転)の改善に果たした役割は大きい。が、全社収益を押し上げている最大の要因はコムサ・イズムの急成長にある。

コムサ・イズムの成長で自動的に収益率が上昇していく

 92年9月の1号店オープンから7年が経過し、コムサ・イズムの店舗数は直営店163店、FC店24店、計187店に達し、直営店の売上高は前期比42.9%増の328億2700万円に成長。当初は30〜40坪級でスタートしたが96年秋以降は新規店舗の大型化と小型店の撤収/大型化改装が急ピッチで進められ(99年度も35店を出店して10店を退店、19店を改装)、新店は150〜250坪級にスーパーストア化して平均売場面積もほぼ100坪まで拡大した。
 百貨店から郊外SCという出店立地の変化と急激な大型化へのMD対応の遅れで、当初は30万円を超えていた月坪効率は98年度には20万円を切るまで低下したが、99年度からMDとサプライ体制が追い付いて販売効率が大幅な上昇に転じ、2000年に入っても伸び続けている。97年秋にレディス事業部に、98年春にメンズ事業部と子供服事業部にイズムMDチームを設置して商品ラインを拡充し、99年春からイズム事業部独自のディストリビューター制を敷いてサプライ精度を向上させた事が奏功した。  店舗の大型化と販売効率改善で1店当たり売上高は97年度の1億5998万円から98年度は1億8258万円、99年度は2億3210万円と飛躍的に拡大。150坪級の新店では3億円以上を売り上げている。
 販売力が確かなSPAゆえの高粗利率、一人当たり保守坪数の大きさ、突出した好出店条件によって、コムサ・イズムの損益分岐点売上は驚くほど低い。同社の最新決算や周辺情報から店舗コスト構造を試算してみたが、平均的な100坪級の店舗なら月坪効率7万円弱で損益分岐点に達し、月坪20万円弱の低販売効率で売上対比27%を超える利益に達してしまう。150坪級の新店なら、営業利益率は30%を超える。これに対して歩率負担の重い百貨店インショップの損益分岐点は月坪27万円強と100坪級イズムの約4倍と高く、月坪45万円を稼いでも10%未満の利益に留まる。
 かつては200億円を遥かに超えていたFC店や委託取引の百貨店インショップ等の卸売上は160億円まで縮小。コムサ・イズム以外の直営店売上も99年度はわずかながらも縮小する中、全社売上に占めるコムサ・イズムの売上比率は94年度の5.1%から99年度は26.8%まで上昇している。急成長しているとは言え、コムサコムサコムサやモノ・コムサの売上スケールはまだ限られたものであり、現在のファイブフォックスの増収益を支えているのはコムサ・イズムに他ならない。
 2001年2月に控えたSCの出店空白期間入りまでに、コムサ・イズムは80店以上の出店を計画。今4月にはモノ・コムサ、カフェ・コムサを含んで500坪に達するメガ・イズムが町田グランベリーモールにオープンする等、大型化も一段と加速している。出店加速と大型化の進行で、コムサ・イズムの売上は3年後の2002年10月期には1000億円に迫まると考えられる。  仮に、コムサ・イズム以外の売上が今後、横バイとするなら、その時の全社売上は1890億円強、コムサ・イズムのシェアは52.6%と半分強を占める事になる。前述の店舗コスト構造の試算を活かせばコムサ・イズムの売上シェアの上昇とともに全社の利益率は加速度的に上昇し、全社営業利益率は2000年10月期には15.6%、2001年10月期には17.5%、2002年10月期には18.6%まで上昇する計算になる。
 イズムは店舗の大型化とともに収益性がさらに向上するし、その他のブランド事業でも前述したような改革が進むから、実際の利益率はさらに高水準になる可能性が高い。ファィブフォックスはイズムのシェア拡大で、今後の何年間かオートマチックな収益性向上が約束されているのだ。

果敢なドメイン転換戦略を学べ

 卸型アパレルの大半が業績を悪化させていく中、SPAの成長力、収益力、キャッシュフローの優位性は明らかだ。が、SPAとて総てが成功している訳ではなく、高収益を実現しているのは一握りの企業に限られる。その中で突出した成長力、収益力を見せ付けるファイブフォックスから何を学ぶべきなのだろうか。
 ほとんどのメーカー系SPAがそうであった様に、ファイブフォックスも専門店主体の卸ビジネスからスタートしたが、78年にコムサ・デ・モード直営1号店を開設してショップ展開に乗り出した。当初は買取型FCを主体としていたが、80年代に入ってファッションビルの直営店へと比重を移行。直営化の進展とともに収益も飛躍的に向上し、81年度には経常利益率は18.4%まで上昇した。
 80年代中盤にはシェアの拡大を目指して丸井を中心に出店を重ね、85年には直営店、インショップの売上シェアが50%を突破。80年代後半は百貨店インショップの集中出店を重ね、90年には百貨店売上比率が80%を超えてメジャー百貨店アパレルの一角を占めるに至った。
 が、バブル崩壊後の消化率の低下と百貨店の高歩率化が収益を直撃し、収益性は年毎に低下。インショップビジネスを基軸としている限り、歩率上昇による収益悪化から逃れる事は出来ない。そこで決断されたのがストア型SPAビジネスの開発であり、それが今日のコムサ・イズムとなっていったのである。  デベロッパーからの出店要請が殺到するようになった現在では、保証金/敷金無し、共益費/共同販促費込みで売上対比12%以下の家賃という好条件で出店しており、初期投資金利や償却を加えても売上対比総不動産費率は16%未満に収まっている。大型売場による販売人件費負担の軽さもあって、百貨店インショップと較べれば20ポイントも運営コストが低く、収益力は突出している。
 インショップビジネスに固執していたならば、とても現在の様な高収益は望めなかったであろう。SPAを標榜しながらも百貨店から脱出出来ず、コスト改善の壁に突き当たっているライバル達を尻目に、SCを舞台としたストアビジネスの必勝パターンをいち早く確立した事が今日の高収益に繋がったのである。  ファイブフォックスは危機的な状況に陥るたびに過去の成功体験を否定し、新たなドメインを創造して売上をシフトする事で、オートマチックな収益改善を果たして来た。今日のコムサ・イズムへのドメイン転換劇も、そのひとつに過ぎない。
グローバル化が進む今のマーケットの変化速度では、一つの事業プロセスは六年くらいしか持たない。既存のマーケットと事業プロセスが壁に突き当たる前に、より高い成長と収益が見込める新たなドメインを創造し、既存の基幹事業からシェアを移動していくしかないのだ。周期的なドメイン転換戦略というグランドデザインを描けない経営では、21世紀に勝ち残るのは不可能だ。  貴社にとって捨て去るべきドメインは何か、これから主力とすべきドメインは何か、その転換によって成長力と収益力はどう改善されていくのか。明確なグランドデザインが求められている。

 

2000年 3月号 『勝ち組ワールドの転機』
2000年 2月号 『“ユニクロ”vs“GAP”の全面対決が招く淘汰の日』
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