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ファッション販売2000年6月号

『SC出店環境の激変にかく対策せよ』

(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


 

現実となるSC出店空白期間

 2000年5月31日をもって大規模小売店舗法が廃止され、翌6月1日から大規模小売店舗立地法(大店立地法)が施行される。現行大店法が中小小売業の保護を目的に制定されたのに対して新法の最大の目的は生活環境の保持にあり、運用主体が国から都道府県若しくは政令指定都市等の地方自治体に、対象となる大型店が売場面積500F超から1,000F超に変わるとともに、店舗面積や年間営業日数、営業時間等に対する規制は廃止され、渋滞の発生を抑えるための駐車台数の確保や周辺道路環境の整備、騒音対策や産廃物保管場所の確保等について審査が行なわれる事になる。
 大店立地法への切り替え後も現行大店法による出店手続で開店出来る「大店法経過措置期間」が定められているが、それは2000年6月1日から2001年1月末までの8カ月間で、2001年2月1日以降にオープンする物件は大店立地法の手続きを踏まなければならない。大店立地法の審査期間は最長1年間。審査主体の自治体から意見書が出なければ8カ月程度と予想されているから、新法の手続きを踏んで着工する物件のオープンは最速でも、工期が1年程度の中型SCで2002年1月末、16カ月程度を要する大型SCならば2002年5月末。つまり、中型SCは2001年2月1日から2002年1月末までの約12ヵ月、大型SCなら2002年5月末までの約16ヵ月は出店が出来ない空白期間となってしまう。
 自治体が積極的に誘致する物件では審査がごく短期に終了するケース、手続き終了を待たずに見切り発車で着工するケースも考えられるから、空白期間中のSC開設が完全にゼロになるわけではないが、少なくとも2001年2月以降、同年いっぱいは大型SCの開設はほとんど無いと考えねばならない。
 99年度の第一種大型店(売場面積3,000F以上、政令指定都市は6,000F以上。SC以外の物件含む)の三条申請数は、空白期間前の駆け込み出店を狙った6月度の60件以降は24〜40件と再び沈静化し、通年で374件と前年から4件の微増に留まった。これら374件のオープン予定年月は総てが2001年1月以前で、大型SC開設の凍結は三条申請動向からも明らか。期限までに開設出来なかったSCは、改めて新法の手続きを踏むことになる。

駆け込みで2000年度は大型SC開設が急増する

 99年度の新設SC数は105SCと前年から1SC減少したものの92年度以降、8年連続して100SCを突破。大型化も一段と進行しており、新設SCの平均GLA(総賃貸面積)は19,857Fと前年から3,462F(21.1%)も拡大。過去最大の97年度(17,043F)と較べても2,814F(16.5%)上回った。GLA30,000Fを超える物件もマイカル小樽(98,000F)を始め、過去最多の14SCに達している。
 2000年1〜3月間の新設SC数は13SCと前年同期の19SCを下回っているが、今後、SC出店空白期間に突入する2001年1月末まで、未曾有の開設ラッシュが続く。
 大手量販店の今年度の出店計画を見ると、負債圧縮を進めるダイエーは99年度実績の8店から6店に減少、イトーヨーカ堂も前年と同数の10店に留まる見通しだが、SM展開を進める西友は11店から45店に、ユニーは9店から13店に、マイカルは4店から8店に急増。ジャスコは前年の27店をわずかに上回る30店前後となりそうだが、GMS業態に限れば10店から23店に急増する。6社合計すれば69店から112店に増加と、空白期間を前に一気に出店ペースを加速させる計画なのだ。
 SCの大型化も加速する。99年度中に三条申請された374件の第一種大型店中、申請面積が30,000Fを超える大型SCは“札幌平岡SC”(アンカー:ジャスコ、54,000F)、“岐阜柳津商業コンプレックス”(同:イトーヨーカ堂、50,255F)等、計9件。これに98年度以前の申請で今春オープンした“JRセントラルタワーズ”(同:JR名古屋高島屋、65,000F)、“モザイクモール”(同:都筑阪急、44,539F)、“イオン成田SC”(同:ジャスコ、57,000F)や、今後オープン予定の“イオン岡崎SC”(同:西武百貨店+ジャスコ、84,216F)、“ダイドープラザU”(同:ロビンソン百貨店、59,423F)等を加えれば、2000年1月から2001年1月末の間にオープンする30,000F超のSCは25件と、過去最多となった99年度の倍近くにも達する。これらの総てが申請面積通りに開業するとは限らないが、2000年度はこれまでにない大型SC開設ラッシュとなる事は間違いない。

SC出店環境の激変にどう対応するか

 大店立地法への切り替えにともなうSC出店空白期間とその前の駆け込み出店の急増は、2年近くも前から分かっていた事。SCを主戦場とするテナント企業の多くは既に対応策を決定しているはずだが、この出店環境の激変にどう対処していけば良いのだろうか。2001年1月末までのSC開設ラッシュ期間、2002年前半までの出店空白期間、大店立地法の手続きを踏んだ物件の開設が始まる空白期間明け、の3期に分けてそのポイントをまとめてみた。
 1)SC開設ラッシュ期間(〜2001年1月末)
 空白期間中は大型SCの開設はほとんど期待出来ないから、その前に如何に好物件を確保出来るかが勝負となる。実際、次年度分前倒しで出店ペースを加速させるという声も少なくないが、あせって不利な条件を飲んだり甘めの採算計画で見切り出店する愚だけは避けるべきだ。
 95年から97年にかけて、SC開設ラッシュとデベロッパーのリーシング難を背景に出店条件が緩和され、大手専門店チェーンが大量出店を続けたが、販売効率低下が止まらぬ中での無謀な出店は収益を一段と悪化させ、98年には退店数が急増した。95〜97年度の水増し出店を98年〜99年の大量退店で精算せざるを得ず、膨大な退店償却損が発生したのである。
 99年度、百貨店衣料品の既存店売上は3.8%、チェーンストアのそれは8.7%も減少した。SCの99年度の販売効率はまだ発表されていないが、依然として低下し続けている事は確実で、単価デフレの加速や若者のIT関連への消費シフト、SC開設ラッシュによる売場面積急増を考えれば、販売効率は今後、一段と低下していくと見なければならない。
 空白期間前に出店ペースを加速するなら、単価ダウンを上回る客数増が見込めるパワーMD業態に限定し、運営コストの低い大型店舗のみを確保し、物件調査と出店採算検証をシビアに行うべきである。この三点を徹底出来ないぐらいなら、マイペースを守ったほうが安全だ。

 2)SC出店空白期間(2001年2月〜2002年前半)
 大型SCの開設が凍結される中、無理に出店ペースを維持するよりも、業務システムの改善や既存店強化に集中するのもひとつの見識だ。どうでも出店ペースを継続したいなら、ふたつの方向が考えられる。
 第一が既存SCの空きスペースやリニューアルSCへの出店。採算悪化に耐えかねて退店を迫られるテナントは今後、一段と増加すると思われるし、92年以降、開設数が急増したSCは順次、リニューアルのサイクルを迎えていく。これらの物件を狙えば、ある程度の出店は確保出来るだろう。
 但し、絶対数には限りがあるし、テナント撤退によって空きスペースとなる物件はSC自体の集客力や当該売場への客導線等、何らかの問題を抱えている場合が多いから、十分な調査と低コストな出店が必須となる。  第二が新たな出店チャネルの開発だ。急速出店を続けるユニクロやライトオンは2001年1月末までは郊外SC主体の出店を続けるが、それ以降はロードサイド立地の見直し、ターミナル型SCやダウンタウン路面への出店加速に加えて、百貨店インショップの出店も視野に入れている。SC出店空白期間は、複数チャネルで展開可能なMDの開発が成長継続の鍵となるのだ。
 もちろん、「SCに出店出来ないから他チャネルで代替えする」といった安易な取り組みでは失敗は目に見えている。かつて、紳士服店の急成長に魅せられた婦人服専門店チェーンが続々と郊外ロードサイドに進出したが離陸すら出来なかったし、百貨店アパレルの多くが郊外SCに進出しているものの成功例はコムサ・イズム以外に見当たらない。新たなチャネルに乗り出すなら十分な準備と実験/検証の積み重ねが必要であり、単に空白期間対応と考えるならやめた方が良い。

 3)SC出店空白期間明け(2002年前半〜)
 2001年1月末までのSC開設ラッシュと2002年前半までの開設数激減は誰もが読めるが、その後のSC開設ペースはどう変化していくのだろうか。
 大店立地法は環境保護的な色彩が強い事から空白期間明けも開設ペースは回復しないという見方もあるが、大手量販店の多くは「空白期間明けに再攻勢をかける」方針を示している。現在、出店調整中で2001年1月末までにオープン出来ない物件が改めて大店立地法の手続きを踏んで出店する事から、2002年前半以降は一時的にかなりの反動増が予想される。それが一巡した後はややペースダウンすると思われるが、開設数がここ数年の水準と較べて極端に落ち込む事はなく、結局は元のペースに戻ると見ていいだろう。
 交通渋滞、騒音、排気ガス、景観等の指針をクリアするためにSC開発コストが上昇してテナントの出店条件にハネ返る事は考えられるが、一方で開発資金調達の多様化や建設工法の低コスト化等の改善要因もあるから、ここ数年の出店条件改善の流れが逆転するとは考え難い。空白期間騒動も均してみれば結局、近年のトレンドと大差無かったという事になりそうだ。

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 これら三段階の情勢掌握は不可欠だが、過去の出店ラッシュとその清算の歴史を鑑みれば、過敏な対応がよい結果をもたらすとは思えない。情勢に関わらず、立地対応の幅があって採算性が高く、デベロッパーからも高く評価されるパワー業態の開発を着々と押し進め、出店調査と採算計画を徹底していくべきではないか。


2000年 5月号 『ファイブフォックスに学ぶドメイン転換戦略』
2000年 3月号 『勝ち組ワールドの転機』
2000年 2月号 『“ユニクロ”vs“GAP”の全面対決が招く淘汰の日』