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ファッション販売2000年10月号『日本の百貨店幹部に告ぐ。高付加価値・低コスト構造への転換を急げ』(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔そごう破綻の本質そごう破綻の直接的な要因は、採算性を無視した無謀な出店戦略がバブル崩壊とともに行き詰まった事だと言われるが、実態はもっと悪質であった。百貨店を営業して利益を出すというより、キャッシュフローで出店投資の銀行借入金利を払い続ければよしという、店舗開発のゼネコン的スタンスの自転車操業であったと思われる。バブルが崩壊しなくても返済は不可能だったはずで、キャッシュフローが破綻無く回っていたに過ぎない。 当然ながら、キャッシュフローを食い潰す運営コストは徹底して圧縮され、マーチャンダイジングや店舗運営に関する経費は必要最小限に抑えられていた。それがMDやショップ運営に過度に介入せずに自由にやらせてくれるという評価も生み、コンセ感覚の売場貸しで大型店が運営されていた。伊勢丹のようにMDやVMDから販売まで二重三重に介入するという店舗運営経費をたっぷり使う体質とは対照的に、MDやショップ運営に介入するだけの人手がなかったというのが実態であった。 すなわち、そごうは百貨店業ではなく、店舗開発のゼネコンに店舗運営機能が最低限付けられていた、一種のデベロッパー業だったのではないか。その破綻をもって百貨店業が行き詰まったと言うのは無理が在り過ぎる。 低付加価値・低コスト運営で百貨店は成り立つかこれまでの我が国の百貨店は郊外店と言えどもターミナル立地に位置し、店舗コストの高さは否めなかった。西武や阪急、高島屋が低コスト運営の郊外店舗にチャレンジしてはいるが、店舗のイニシャルコスト問題を解決出来た訳ではない。将来は米国のように専業デベロッパーが開発した郊外サバーブ立地のSCに地上権取得だけで出店出来る日が来るかもしれないが、すぐには実現しそうもないし、既存店舗のコストが消える訳でもない。 店舗コストの高さという現実がある以上、それを吸収出来るだけの高付加価値を創造しない限り利益は出ない。運営コストの低さだけで利益が出せるのは、店舗のイニシャルコストが極端に低いか開発コストが自己資金の場合に限られる。もちろん、店舗開発の借入金を返さなくてもいいと割り切れば、金利支払い分の営業収益だけあれば存続できるが、営業収益が低下して金利支払いが不能となれば破綻せざるを得ない。 SC専業デベロッパーが発達していて店舗開発コストが極端に低く、百店単位のチェーン展開を行っている米国のデパートメントストアを引き合いに出してローコスト運営を論じて見ても、現実はあまりに異なる。そごうの破綻に学ぶまでもなく、店舗コストを吸収出来る高付加価値創造力を確立しない限り、日本の百貨店業は成り立たないのだ。 にもかかわらず、我が国の百貨店は逆方向に退化していった。ブランド単位の売場構成を組み、リスクとコストの圧縮を優先して品揃えも売場運営も納入業者任せに流れ、在庫リスクも販売員も負担しない売場貸し体質が蔓延してしまったのだ。手間いらずの委託取引(契約上は条件付買取)でシェア拡張を進めた大手アパレルが悪いのか、その誘惑に乗って堕落した百貨店が悪いのかといった過去の議論はさておいて、平場は縮小の一途を辿ってきたし、買取比率は極限まで低下していった。 当社が昨十月に実施した都市百貨店バイヤーアンケートでも、インポートブランドを除けばアパレル製品の買い取り比率はなんと1%程度、販売員の負担率も最大で16%程度に過ぎなかった。自主MD平場の強化が叫ばれながらも、現実には遅々として進まないばかりか、退化し続けているのが実態なのだ。 なぜ自主MD売場は拡がらないのか販売動向に即して期中で補充生産する体制があるわけでもないから、生産ラインからQRを仕組んでいるSPA型ブランドとは補給力に大差がある。価格にしても、せいぜい二ダース程度の店舗数で仕入れのロットをまとめている程度では、何百店舗もの大ロットで生産ライン管理まで踏み込んでいる大手SPAには太刀打ちのしようがない。 セレクトショップ的な編集テクとルック回転型のVMD手法で魅力を訴求する方法もあるが、一品を手に取って価値と価格を比較されれば突出した魅力があるとは言い難い。QR生産によるピーク時売上の上積みも困難だから、さほどの効率は望むべくもない。自主MDと意気がってみても、結局は競争力を欠いているのだ。 百貨店にとっても、販売効率でも収益性でも売場貸しに劣る自主MD平場を拡張するメリットは薄い。同一商品の消化仕入と買取の値入れ差は10〜14ポイントに過ぎないから、単なる買取ではリスクに見合う高値入れが確保できないし、派遣店員を自主販売に切り替えても7ポイント程度の改善にしかならないから、販売人件費は吸収できない(前出のバイヤーアンケートより)。販売効率も収益性も売場貸しの水準に達しない以上、自主MD平場の拡張が進まないのは当然だろう。 自主MD平場は自主開発でないと成り立たないブランドメーカー同様に企画、スペック開発、生産ラインと素資材のソーシングまで踏み込めば、価値と価格の競争力はもちろん、リスクをカバーして余りある値入れも確保できる。従来のようにコストの高い百貨店アパレルと組んでいては不可能なことだが、ちょっと踏み込めばやり方はいくらでもある。 何もデザイナーやパタンナーを抱えて工場管理までしなくても、小回りの効くOEMアパレルやスペック開発機能を持った工場と組めば、百貨店バイヤーにも商品開発は出来る。きちんと要望を出せば、パートナーは商社が探してくれる。それは伊勢丹のBPQCでも実証済みではないか。 サンプルや絵型等での明確な指示と試行錯誤による摺り合せを積めば、特殊な構造でない限り求めるスペックに近づけられる。最近ではスペック開発まで請け負う会社もあるから、固定費をかけずにオリジナル開発に取り組める。スペックを詰めていくプロセスが面倒だという体質のバイヤー、スペックがどうあるべきかの理念を持たないバイヤーには向かない仕事だが、セレクトショップのオリジナル開発では定石化している手法だ。 有力セレクトショップのオリジナル開発ではメーカータイアップでも55%以上、工場直発注なら65%以上の当初値入れが可能であったが、最近の急激な価格訂正でツーラインは価格が下がり、コスト圧縮でカバーしても8〜10ポイントも値入れが減ってきた。 チェーンメリットを欠く百貨店の自主運営平場は管理コストも含めて20ポイント(売上対比では25%)以上も運営コストがかかるし、ロット発注でフルリスクとなればロスを20ポイントは見ないと利益が残らない。これに売場貸しなら最低限だまって入ってくる歩合を20ポイント(同25%)乗せるとなれば、値入れが60%以上取れないと売場貸しより利益が下回ってしまう。歩合負担の重い百貨店アパレルでは当初原価率を25%程度に抑えないと利益が出ないのが実情だから、この試算は間違ってはいないと思う。 となればメーカーとのタイアップ開発は非現実的で、工場への直接発注ないしは商社等を介したOEM調達でないと採算が成り立たない。オリジナル商品だけではバラエテイやコーディネイトのコントラストを欠くから利幅の薄いセレクト商品も加えなければならず、その分もカバーしなければならない。自主MD平場は自主開発でないと成り立たないのだ。 このように見れば自主MD平場はセレクト編集型SPAやSPAに近似したコンセプチュアルな専門店であり、自主MD平場開発は業態開発と同義ということになる。 高付加価値・低運営コスト体質に転換せよ各業態化平場はゾーニングの一翼を分担する独立した専門店であり、オリジナル開発商品を軸とするセレクト編集型SPA形態かオリジナル開発商品だけのSPA形態になるはずだ。それぞれが独自の調達システムとVMD体系を確立して売場運営も在庫運用も独自に行う、店舗やフロアの管理組織とは独立した専門店チェーン型の運営が行われるべきだ。販売組織は店舗ではなく業態の本部に所属し、独立採算でコンセのように歩合家賃を負担する。 このように見るとノードストロム社の姿に近いように思われるが、同社より各業態の組織的独立性が強い点、コンセのブランドショップも少なからず加えられる点が異なる。ストア総体の戦略下で制御されるとは言え各業態は独自のマーケティング戦略を持ち、個々のストア毎に採算を立てて交渉の上で出店するし、独立業態としてモールへ出店することも有り得る。ノードストロム社というより、量販店の専門店事業部制に近いのではないか。 ファッション分野でこのような事業形態が確立されれば、ブランドに左右されない強力なアイデンティティが得られるし、粗利益率も格段に改善される。加えて、業態化事業では標準化によって効率的なチェーン運営が行われるから、運営コストも切り下げられる。 かくして高付加価値・低運営コスト体質が確立され、郊外大型SCのアンカーとしてチェーン展開する将来も約束されて、日本の百貨店は新たな成長期を迎える。という展望が開けば良いのだが、今までこのような構想に挑戦することを阻んできた組織体質が立ちはだかるようなら夢物語で終わるしかない。百貨店組織の現場と経営陣のあまりに遠い距離を考えると、理屈では開くはずの道も開けないのかもしれない。 |
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| 2000年 9月号 | 『スーパーストア/大型平場のレイアウト技法』 |
| 2000年 8月号 | 『価格破壊バトル“秋の陣”その現実と対策』 |
| 2000年 7月号 | 『最新注目SCに見るスーパーストアSPA業態の実力比較』 |
| 2000年 6月号 | 『SC出店環境の激変にかく対策せよ』 |
| 2000年 5月号 | 『ファイブフォックスに学ぶドメイン転換戦略』 |
| 2000年 3月号 | 『勝ち組ワールドの転機』 |
| 2000年 2月号 | 『“ユニクロ”vs“GAP”の全面対決が招く淘汰の日』 |