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ファッション販売2000年12月号『最新SC診断 イオン岡崎SCと岡崎西武の完成度』(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔2.5核型の郊外RSC、イオン岡崎SC初年度売上予算は西武百貨店が112億円、ジャスコが124億円、スポーツ・オーソリティが10億円、専門店が154億円の計400億円。年間坪効率予算は西武百貨店が226.1万円、ジャスコが228.2万円、スポーツ・オーソリティと専門店が233.7万円、SC全体では201.7万円(共有部分の面積含む)と見込まれている。 99年10月にオープンしたオーロラシティーの当初年間坪効率予算が西武百貨店が203.6万円、ダイエーが176.9万円、専門店が221.2万円、共有部分を含んだSC全体では200.2万円であったから、SC全体の坪効率予算は両者ほとんど同じ。西武百貨店に限れば岡崎店は戸塚店より1割強高いが、開業後約1年が経過した戸塚店は予算比ほぼ9掛けで推移していると伝えられるから、それと比較すれば23%強も高く設定されている。 西武百貨店はRSCへの出店による郊外マーケット開拓を「21世紀に向けた成長戦略」と位置付けており、イオン岡崎SCへの出店はその第一弾。GMSとの複核型RSCへの出店ではオーロラシティーに続くものとなる。イオン岡崎SCの成否は西武百貨店のみならず、未だ都心の大型巨艦店主義から抜け出せず閉塞感が蔓延する我が国の百貨店ビジネスの将来を占う意味でも極めて重要だ。イオン岡崎SCは百貨店の21世紀戦略の橋頭保となるのか、まずは販売効率を左右する商圏データをオーロラシティーと比較してみた。 イオン岡崎SCの競争力を検証するイオン岡崎SCの5キロ圏内人口は23万人強に留まり、10キロ圏に拡げても48.8万人しかない。対して、郊外ターミナルの戸塚駅前に位置するオーロラシティーの5キロ圏内人口は約74万人とイオン岡崎SCの3倍以上で、10キロ圏内では240万人近くに達する。岡崎西武は戸塚西武(19452平米)をさらに15%下回るコンパクトサイズで、それだけ商圏拡張力は限られる。ジャスコにとっては十分でも、西武百貨店にとってはギリギリの足元商圏密度なのだ。 《5キロ圏内消費吸収力》 5キロ圏内の世帯当り消費支出と世帯数から5キロ圏内支出総額(商圏内購買力)を算出してみたが、イオン岡崎SCのそれは2900億円と1兆2227億円に達するオーロラシティーの4分の1にも満たない。 但し、購買力がストレートに商圏の小売パワーに繋る訳ではない。隣接する商圏の方が強力であれば消費は流出してしまうし、その逆ならば消費は流入する事になる。商圏の消費吸引力は様々な方法で算出出来るが、最も簡単な手法が商圏内購買力と商圏内小売売上高の比較で、小売売上高を購買力で割った値が高いほど消費吸引力が強い事になる。 イオン岡崎SCの5キロ圏内小売売上高は3448億円。同SCの売上予算を単純加算すれば3848億円で、5キロ圏内消費吸収力は133.1%。オーロラシティーは自身の売上予算を単純加算すれば6425億円とイオン岡崎SCの約1.7倍だが、北東約7キロに巨大商業集積の横浜ダウンタウンが控え、5キロ圏内消費吸収力は52.5%に留まる。消費吸引力はイオン岡崎SC商圏の方が圧倒的に強い。 《5キロ圏内売場占拠率》 SCの商圏内占拠率も販売効率を大きく左右する要素で、その好例が地域一番店の強さだ。SCの売場面積と5キロ圏内売場面積から5キロ圏内売場占拠率を算出してみたが、イオン岡崎SCのそれは17.8%とオーロラシティーの10.2%を大きく上回る。 オーロラシティーが北東を横浜ダウンタウン、南東をウィング上大岡(アンカー:京急百貨店、売場面積50939平米)、南西をラピス戸塚(アンカー:丸井、売場面積21939平米)に押さえられて広域からの集客に難があるのに対して、イオン岡崎SCの10キロ圏内の商業集積は岡崎ダウンタウンと安城商圏が目立つ程度。北に約2キロと近い岡崎ダウンタウンのクレオはアンカーの松坂屋が12230平米、SC全体でも16000平米強、岡崎メルサも8000平米強と小スケールで競争力に劣るから、イオン岡崎SCは周辺のSCに阻害されることなく広域からの集客が期待出来る。 《SC販売効率予測》 SCの売上高は商圏の人口や消費支出、消費吸引力や商圏内売場占拠率等の要素で上下するから、これらに何らかの係数を掛けて売上高(販売効率)を予測する事が出来る。既存の百貨店アンカー型郊外RSCの売場面積、売上実績と5キロ圏の各数値をベースに係数を求めた上でイオン岡崎SCの年間坪効率を予測してみたが、共有部分を含んだSC全体で216.8万円と予算を7.5%上回った。 オーロラシティーの予測値が217.8万円であったからイオン岡崎SCはほぼ同水準の効率を望めることになるが、現実にはオーロラシティ自体が予測値より8%ほど低い予算を数%割り込んでいる趨勢、戸塚西武は予算を一割程度下回る183万円前後の趨勢だから、岡崎SCもストレートに予測値を期待する訳にはいかない。 岡崎SCはオーロラシティーより有利なポジションにあること、モールの構成も一歩進んでいること、西武百貨店もオーロラシティーの教訓を取り入れていること等を考慮するなら、モールの効率は期待通り、岡崎西武の効率は予算の九掛け程度になるのではないか。 イオン岡崎SCのテナント構成を検証する専門店モールの大型テナントはサブアンカーの「スポーツ・オーソリティ」や「タワーレコード」の他、ファッション関連では「無印良品」「コムサ・イズム」「ライトオン」「ナチュラルビューティー・ベーシック」「エピウスプレイス」「ハッシュアッシュ」、2フロアを店内階段で繋いだ「GAP&GAPKIDS」等のスーパーストア勢はもちろん、バックの「サザビー」、ランジェリーの「アモスタイル」等、ららポート3と共通するテナントが目立つ。 「無印良品」「コムサ・イズム」「ライトオン」「GAP&GAPKIDS」はオーロラシティにも出店しているが、最近のRSCにおけるファッション系スーパーストアの常連は「ユニクロ」「a.v.v」を除いてほぼ揃っている(イトキン系の「オフオン」、MKグループは西武百貨店内に出店)。が、メジャー化したスーパーストアは認知度の高さでSCの集客に貢献しても、差別化の武器とはならない。実際、「無印良品」「コムサ・イズム」「ライトオン」はイオン岡崎SC開業以前に岡崎商圏に進出済みだ。 集客が期待できるメジャーなスーパーストア群をテナントミックスの核にしながらも、どれだけ個性的なテナントを集められるかがRSCの魅力を左右する。イオン岡崎SCにおいてその役割を果たすと考えられるのは、根アカ・ママ子カジュアルの「ドラッグストアーズ」やエスニック雑貨の「マライカ」、セレクト系の「ノゥビーンズ」、ジヤスコのコンセだが地元の元気キッズ店「スーパー7マーケット」等であろう。 ららポート3の販売実績でも明らかになっている事だが、メジャーなスーパーストアを過度に集積すると互いに食い合って販売効率が低位に留まる一方、個性的なミニ・テナントが意外なほどの高販売効率を叩き出す。そんな最近の販売データから見れば、イオン岡崎SCでも個性派テナントが意外な活躍を見せてくれるのではないか。 岡崎西武は21世紀戦略の橋頭保となるかが、既に開業している百貨店アンカーの郊外RSCを見る限り、成功例はほとんど無い。近年では近鉄MOMOや港北東急百貨店SC、阪急百貨店核の港北モザイクモール等がオープンしているが、いずれも大幅な予算割れに苦しんでいる。オーロラシティーでも足元商圏を押さえたダイエーこそ好調なものの、戸塚西武は横浜への流出を押さえ切れず予算を割り込んでいる。 岡崎西武は初期投資額を45億円に押さえ、2年目に単年度黒字、5年目に累損を一掃し、7年目には投資回収を予定しているが、目論見通りの売上を確保して郊外RSCアンカー百貨店のプロトタイプと成り得るのだろうか。 オーロラシティーに比べれば周辺に強力な商業集積もなく優位な競合条件にある事、ワンフロア1240坪のスケールを活かした4層構成の回遊性の高さ、売場面積の約63%をファッション関連売場に集中という商品領域の絞り込み(西武百貨店のファッション関連売場の平均シェアは54%)等、一般的に考えれば成功に繋がる要素も多い。自社開発商品を核としたディレクション・ショップ群も差別化の武器となるし、ロフトの集客力も期待できる。が、実際に売場を見て回ると的を外しているという印象が強いのだ。 一番にひっかかるのが、都心の百貨店なら8か9フロアで展開する商品領域を4フロアに押し込んでいることだ。一階には食品と婦人雑貨、二階と三階にはヤング〜ヤングキャリア婦人服、キャリア〜ミセス婦人服、プレタ&特選、紳士服の4領域が、四階にはインテリア雑貨、子供服、ロフトの3領域が詰め込まれている。 ワンフロアが1240坪もあるとは言え、どの領域の品揃えを見てもバラエティの欠如は明らかで、郊外商圏のニーズに様々な角度から応える品揃えにはなっていない。店の側で顧客とニーズをコンセプチュアルに絞り込み、コンパクトな売場にまとめ上げている。 その中では大きく売場を確保した婦人服にしても、各ゾーンでコアのブランドが最低限並べられているだけで、不可欠なブランドがいくつも欠けているし、ディレクション・ショップに売場を割いた平場では、比較購買がまったく成り立たないほどブランドが絞られている。紳士服や子供服、インテリア雑貨はもっと削り込まれた構成で、顧客が部門として充てに出来るバラエティを大きく下回っている。それは半フロアに削ぎ込まれた食品とて同様で、これでは噴水効果どころか顧客が食品売場として認知することさえ難しい。せめてロフトだけでもモールへ出し、食品と子供服でワンフロアを構成すべきであったろう。 西武百貨店が将来を賭けたディレクション・ショップ群にしても、NBを凌駕する感性で池袋では輝きを見せたものの、岡崎ではコンセプチュアルな絞り込みゆえにMDのバラエティを欠き、郊外小商圏のニーズをカバーしきれない間口の狭さを露呈していた。 岡崎西武の商品編成は総じてコンセプチュアルに削ぎ上げられたもので、郊外小商圏では多くの売上は期待できない。GMSとの二核型SCというより米国式のスペシャルティ・デパートメントストア多核型SCに対応した業態に近く、せいぜい二核型の我が国の郊外SCでアンカーとして多店化していくのは極めて難しい。ディレクション・ショップ群にしても、都市型百貨店のジュニアチェーンとしては突出して踏み込んだ秀作と高く評価すべきだが、郊外SCアンカー百貨店を構成する業態化平場としてはカバー率が低すぎて役割に耐えない。 岡崎西武は投資効率を優先するあまりに店舗規模をコンパクトに抑えた事が、すべての領域において品揃えのバラエティを圧迫しており、郊外SCのアンカー百貨店として顧客の期待に応え切れない姿になっている。 郊外SCアンカー百貨店の最大の苦戦要因は過小な売場面積と商財のバラエティ不足による集客パワーの低さで、当社で大都市圏郊外の主要なSCアンカー百貨店の販売効率と商圏内売場面積占拠率の関係を分析したところ、明確な相関関係が見られた。つまり、郊外SCでは占拠率の低い小型百貨店の販売効率は期待できないのだ。 せいぜい二核型までの我が国の郊外大型SCにおいては、エンターテイメント食品にしっかりワンフロアを割き、レストラン街も備えた、ミニマム二万平米、出来れば二万四千平米程度のスケールを持ったアンカー百貨店が必要なのではないか。西武百貨店の郊外SCアンカー百貨店チェーン化構想は百貨店業界の未来を照らす画期的なものだが、米国とは実情が異なる以上、構想を実現するにはもっと現実的な戦略とテクニカルな対応が求められよう。 |
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| 2000年12月号-2 | 『無印神話崩壊の危機』 |
| 2000年11月号 | 『西武百貨店“SP21”プロジェクトに見る百貨店自主MD売場の成功条件』 |
| 2000年10月号 | 『日本の百貨店幹部に告ぐ。高付加価値・低コスト構造への転換を急げ』 |
| 2000年 9月号 | 『スーパーストア/大型平場のレイアウト技法』 |
| 2000年 8月号 | 『価格破壊バトル“秋の陣”その現実と対策』 |
| 2000年 7月号 | 『最新注目SCに見るスーパーストアSPA業態の実力比較』 |
| 2000年 6月号 | 『SC出店環境の激変にかく対策せよ』 |
| 2000年 5月号 | 『ファイブフォックスに学ぶドメイン転換戦略』 |
| 2000年 3月号 | 『勝ち組ワールドの転機』 |
| 2000年 2月号 | 『“ユニクロ”vs“GAP”の全面対決が招く淘汰の日』 |