home
小島健輔の最新論文
この論文についての感想を『小島健輔一問一答』掲示板へ書き込み下さい。
こちらをクリックすると『小島健輔一問一答』へジャンプします。

ファッション販売2001年1月号

『ワールドの郊外SC戦略業態「タイプフェイス」の実力を検証する』

(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


低価格SPA業態「タイプフェイス」を一気6店開設

 小売SPA戦略を加速するワールドが量販店アパレルのトップ企業、桜屋商事と組んで郊外SC市場の攻略を狙う低価格SPA業態「タイプフェイス」が、10月16日にジャスコ茅ヶ崎SC(100坪)、11月1日にダイヤモンドシティ川口キャラ(132坪)と、相次いで立ち上がった。このあとも11月15日のダイエー稲毛長沼(102坪)、11月22日のしまむら西大宮ファッションモール(80坪)、11月30日のイズミヤ京都プラザ(120坪)、12月上旬のトリアス久山(123坪)と年内、計6店舗が開設される予定だ。
ジャスコ茅ヶ崎SC、ダイエー稲毛長沼、イズミヤ京都プラザは「タイプフェイス」の単体出店だが、ダイヤモンドシティ川口キャラは「ハッシュアッシュ」と、西大宮ファッションモールは「ネクストドア」と、トリアス久山は「ハッシュアッシュ」「ネクストドア」との複合出店となる。

 

「ワールドシーピー」は小売業

 「タイプフェイス」は、メーカー系SPAの枠を超えて小売事業体質を強めるワールドが、低価格生産体制で突出した桜屋商事と製販資本同盟を組んで今三月に設立した新会社「ワールドシーピー」で郊外SC市場攻略を狙う戦略業態だ。同社は資本金一億円で、ワールドが70%、桜屋商事が30%を出資。ワールドの小売事業部門エンポリアム部を母体に設立され、同部の久保木部長が社長に就任している。  「ワールドシーピー」は生産を桜屋商事にアウトソーシングする小売事業会社であり、MD企画と店舗開発、店舗運営という小売ノウハウがワールド側の分担。生産を担当する桜屋商事の売上対比経費率は15.3%と突出して低く、低価格商品を短サイクルで海外生産する効率的なオペレーション体制が確立されているのが強味だ。
 高コストなブランドアパレル体質を残したまま小売部門を拡大して経費率が急上昇しているワールドにとって、低価格とローコスト運営が不可欠な郊外SC市場進出にあたって桜屋商事との提携は必然の選択であった。
 生産は桜屋商事のノウハウ、MD企画と店舗開発、店舗運営はワールド側のノウハウという理想的に見える分担が「タイプフェイス」に発揮されているのか、一号店のジャスコ茅ヶ崎SC店、二号店のダイヤモンドシティ川口キャラ店を検証してみた。

ロケーションは良いが店舗は凡庸

  ジャスコ茅ヶ崎SC店はGMS一体型コミュニィティモールへの単体出店、ダイヤモンドシティ川口キャラ店は1.5核モール連結型リージョナルSCへの「ハッシュアッシュ」との複合出店と、立地的には両極の実験的要素が強いが、両店舗ともSC内ロケーションは抜群。ワールドへのデベロッパーの期待の大きさの現れだが、言い換えればワールドの店舗開発力が発揮されたと評価されよう。
 が、店舗のビジュアルは凡庸かつチープで、ワールドのセンスが発揮されているとは言い難い。白一色の内装や入口の大型テーブルは「a.v.v」かと錯覚させられるし、ジャスコ茅ヶ崎SC店頭の円形柱巻き陳列は「コムサイズム」のコピーでしかない。抑揚を欠く平板なレイアウトが災いしてか、広々とした空間が量販平場的に見えてしまう。
 ワールドらしさを感じさせるのは服飾雑貨の陳列と店名のロゴデザインくらいなもので、他はコピー的な意匠ばかりでオリジナリティが欠落している。業界注目の中で郊外業態に進出する以上、ストアのビジュアルぐらいは息を呑むくらいの斬新さが欲しかった。同時に一号店を茅ヶ崎ジャスコ内に開設した「セルフサービス」と比較すれば、店舗の凡庸さは明らかだ。内部から伝え聞く内装コストはこのチープさからは信じられない高さで、ワールド店装部の高コスト体質だけは持ち込まれているようだ。

量販店平場と大差ない凡庸で薄味なMD

 郊外SCのスーパーストアで一番の要となるのがMDの組み方(VMDのインパクトに直結する)だが、こちらも時代遅れの凡庸なもので同質化にドップリと陥っているし、差別化とコストを決する素材集約もまったく出来ていない。
 「ユニクロ」が50色展開を唱い「コムサイズム」が多様なアイテムとデザインを展開する中で10色(一部、8色)、8型展開のフリースのMDはインパクトを欠くし、12色2型展開のラムウール・ハイゲージニットは素材も編地も凡庸で価格だけの量販平場商財と言うしかない。綿アンゴラ天竺ニットのデザインやシャツブルゾンのパターン等にはワールドらしいOL感覚が感じられるものの、総じて薄味なベーシック商品ばかりで、ディティールや縫製始末にもキャラクターがない。
 全体編成も、川口キャラ店のレディスはパワートップス、カジュアルボトムス、ウールボトムス、アウター、シャツ、ニット、ジャケット&ボトムス(セットアップ)のアイテム別と凡庸で、量販平場の単品構成+セットアップの印象(茅ヶ崎SC店ではルック訴求も行われていた)。MDの展開軸にもその見せ方にも新鮮な意匠がなく、何もかも何処かで見た手法ばかり。
 セットアップが6素材18型、郊外のヤンママを意識した茅ヶ崎SC店でも5素材15型も展開されている等、郊外SCのママ子業態としては違和感がある。
セットアップ以外にもボトムスが10素材18型、うちウール系が7素材11型もあり、茅ヶ崎SC店では入り口で大きく展開されていたカットソーが無く、替わりにポリ・サテンのブラウスが展開されている等、川口キャラ店は明らかにOLを意識したMDになっている。  11月初旬なのにフリースを除けば単品アウターがナイロンタフタと綿コーデュロイの計4型だけ(キッズでも同様に2型のみ、茅ヶ崎SC店のレディスでもナイロンタフタの3型だけ)、カジュアルシャツがまったく無い等、フリースやカジュアルボトムはあっても両店ともカジュアルが弱い。奇麗めなセットアップ&ボトムスにベーシックニットとOL感覚のシャツというのが中核のMDで、シーズンMDの組み方も郊外SC対応業態という開発意図もよくわからない。
 レディスでは計70型が28素材で展開されているが、フリースを除いては素材の戦略的な集約は見られず、キッズとの共通素材もナイロンタフタとフリースだけで、桜屋側の素材背景に相乗りしている実情が見てとれる。
 生産は桜屋商事に依存しているとはいえ、素材が桜屋の量販素材ばかりでディティールも凡庸となれば値段相応の価値感しか出ず、先行する低価格スーパーストアとの差別化どころか、量販店平場商財との価格競争になりかねない。実際にキッズなど、最近魅力を増したジャスコの平場の方が、もっと凝った味の濃い商品が安く手に入る。
 ライバルのファミリー業態がいない独占状態なら最低限の効率は稼げるだろうが、「コムサイズム」や「a.v.v」等、先行するライバル業態とぶつかればひとたまりもない。ジャスコ茅ヶ崎SC店では月商1500万円(月坪15万円)を計画しているが、ライバルがいないとは言えジャスコの平場に食われかねず、商圏も限られるから、せいぜいその八掛け程度に留まるのではないか。ダイヤモンドシティ川口キャラ店は大商圏で客数は十分だが、「コムサイズム」「a.v.v」に加えて「無印良品」「組曲ファム」「ライトオン」等も出揃っており、販売効率はジャスコ茅ヶ崎SC店を下回るかも知れない。

ワールドのノウハウは何処にあるの?

 このように見ていくと、いったいワールドのノウハウは何処に入っているのかと考えさせられる。デベロッパーはワールドの何かに期待して一等地を格安条件で提供したのだから、それが無いとなれば今後の店舗開発は一気に不利になってくる。
 MD/VMD面では先行するライバルのワンシーズン遅れのコピーでしかなく、ワールドのノウハウが入っていないというより、ワールド自体に郊外型のオリジナルなMD/VMDを創造するノウハウが欠けている事を露呈している。シーズンの基本的な構成バランスを著しく欠く等、小売MDノウハウも極めて疑わしい。加えて、素材背景が桜屋そのものとなれば、商品にワールドらしさを求めるにも限界が有る。
 デザインやパターンの一部はワールド側のスタッフが行っているとは言え、桜屋商事の生産背景を活用する以上は生産仕様が桜屋商品と同質化する事は避けられない。ワールド側が工程毎のインダストリアル・スペックまで指定すれば改善は可能だが、それにはソーシングとコストの問題がからむから桜屋商事と提携したメリットが薄れてしまう。第一、生産のアウトソーシングに慣れ切った今のワールドの商品開発スタッフに、それを求めても無理というものだろう。

ワールドらしさが郊外での成功に繋がるか

 今後、デザインやバターンではワールドのセンスが入って改善が進むと期待されるが、それが郊外SC戦略業態たる「タイプフェイス」の成功に繋がるとは限らない。
 現在の「タイプフェイス」でも服飾雑貨にはワールド的な楽しさが感じられるがその分、OL感覚も強くて実用性が弱く、郊外の若いママにそのまま受け入れられるかは疑問。ウェアにしてもワールドのこれまでの郊外型業態同様、ワールドらしさを強めるほどOL感覚が強まって顧客が限定され、郊外立地では売上が届かずにターミナル立地に舞い戻ってしまうのではないか。川口キャラ店では早くも、その兆候が濃厚に出ている。
 当初は郊外市場を狙った「INDEX」もそのような経緯を辿ってターミナルに戻ってしまったし、郊外のコンビニ立地を狙ったはずの「イッツデモ」さえ早くもリージョナルSCとターミナルにシフトしてしまった。「ハッシュアッシュ」も改善とともにOL感覚が強まっており、これもターミナルに戦場を移していかざるを得ない。このように見るなら、「タイプフェイス」に限らず、ワールドの手掛ける郊外立地狙いの業態はどれも先が疑わしいということになる。
 ワールドの小売SPA部隊の原点は「オゾック」であり、今日の主力も「インディヴィ」「アンタイトル」といった20代OL狙いに特化されている。デザインのセンスもパターンも生産スペックもシーズンのMD展開も、すべてはターミナル立地におけるOL狙いのノウハウが積み上げられたものなのだ。
 ワールド自体が郊外立地での成功実績もないまま、いったいどんなノウハウを提供して「タイプフェイス」を成功させようというのだろうか。実験と検証の経営を謳うワールドだが、最初の座標が大きく狂っていて改善のベクトルが特定方向に限られているとしたら、どうやって成功にたどり着けるのか。
 桜屋商事の低コスト生産とオペレーション効率は突出したものだけに、それを活かし切る手腕がワールドに問われている。誰が何のノウハウを持っているのかを見極めて、この提携戦略は抜本から組み直されるべきである。


<<<参考資料>>>

●TYPE FACEのMD編成ツリー●
(ダイヤモンドシティキャラ 2000年11月 2日調査)
※かなり重たい画像データ(約200kB)です。ご了承下さい。





2000年12月号-1 『最新SC診断 イオン岡崎SCと岡崎西武の完成度』
2000年12月号-2 『無印神話崩壊の危機』
2000年11月号 『西武百貨店“SP21”プロジェクトに見る百貨店自主MD売場の成功条件』
2000年10月号 『日本の百貨店幹部に告ぐ。高付加価値・低コスト構造への転換を急げ』
2000年 9月号 『スーパーストア/大型平場のレイアウト技法』
2000年 8月号 『価格破壊バトル“秋の陣”その現実と対策』
2000年 7月号 『最新注目SCに見るスーパーストアSPA業態の実力比較』
2000年 6月号 『SC出店環境の激変にかく対策せよ』
2000年 5月号 『ファイブフォックスに学ぶドメイン転換戦略』
2000年 3月号 『勝ち組ワールドの転機』
2000年 2月号 『“ユニクロ”vs“GAP”の全面対決が招く淘汰の日』