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ファッション販売2001年9月号 『アベイルはポストSPAの星となれるか』(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔急成長が注目される「アベイル」「しまむら」が近隣圏(8千〜一万世帯)のミセス層を中心にアパレルやインナーから寝具までコモディティなソフトライン・アイテムを細かく揃えているのに対し、「アベイル」はコミュニティ商圏(二万五千世帯以上)のヤング〜ヤングミセス層にトレンディなカジュアルファッションのバラエティを提供している。 出店立地は「しまむら」同様、郊外生活圏のロードサイドだが、「しまむら」が幹線生活道から一本入った近隣立地であるのに対し、「アベイル」は幹線生活道に面したコミュニティ立地。この六月で既に32店に達しているが、主力のフリースタンディングに加えて「しまむら」とのペア店舗が8店、ホームセンター系やSM系のコンビニエンスモール店舗も4店含まれている。 売上は2000年2月期が前期比2.59倍の39億7千万円、2001年2月期が同1.78倍の70億5千万円と急成長しており、2002年2月期も同1.77倍の125億円を見込んでいる。収益面でも前期までの営業赤字から2001年2月期には7千万円の営業黒字に転じており、2002年2月期では売上対比3%の営業利益を確保する見通しだ。 2002年2月末52店舗、2004年2月末100店舗を計画しており、その時点では営業利益率も8%に達して巡航軌道に載るはずで、最終的には全国五百店舗を構想している。 提供方法が新たなショッピングスタイルを創る靴や服飾雑貨、アンダーウェア、ソックス、ストッキング、NBジーンズ等は品種品目が台帳型に棚割りされ、カジュアル衣料はテイスト別にフェイスアウトを多用したコーディネイト陳列がされていて、ほぼセルフサービスが成り立っている。レディス側の前に集中レジと修理ミシンがカウンター型にパッケージされ、西大宮店ではインナー&ソックス/ストッキング売場を挟んだ向かいにレジ・カウンターを向いて集中フィッテングが配されている。 レジ・カウンターと集中フィッティングの配置関係はどの「アベイル」でも大差ないが、レジ・カウンターからの距離や視認性に問題があるし、大型ミラー壁等によるフィッティング=変身演出といったコスプレ的エンターテイメント性を欠き、はっきり言って芸がない。「アベイル」のコンセプトなら、このパッケージにこそ突出した仕掛けが必要なはずだ。 「オールドネイビー」のようなクラブ・ミユージックやダンシング・セールスクラークといった派手なノリはないものの、磨き上げた御影石の床と統一されたダークネイビーのシステムラック群、4メーター級の天井高と温白(多分3000K)のFHTペンダント照明の作り出す店舗空間は十分にゴージャスで、下手に手抜いたPタイル張り床と白色蛍光灯照明の百貨店より遥かに洗練されている。 品揃えのバラエティと鮮度、ゴージャスな店舗空間、スーパーマーケット型のレイアウトとテイスト別のコーディネイト陳列、集中レジと集中フィッティングのセルフサービスがパッケージされた「アベイル」の提供方法は、都市感覚のヤングやヤングミセスに郊外での新しいショッピングスタイルを喚起するに十分な魅力がある。惜しむらくは営業時間が朝十時から夜八時までと限られる事とエンターテイメント性を欠く事で、顧客層の有職比率の高さとライフスタイル、トレンド感度を考えれば、せめて十時までは営業すべきだし、集中フィッティングにおけるカリスマ・フィッターと大型ミラー空間による変身演出ぐらいは欲しいものだ。 品揃えのバラエティと鮮度が魅力当社が毎シーズン作成している客層別スタイリングマップと照合してみても、レディスではヤングからトランスキャリアの16タイプ中、クリエイティブ系とソフトモード系、エレガンスモード系、トラッド系を除いた12タイプをカバーしていたし、メンズではヤングからヤングアダルトまでの10タイプ中、トラッド系とユーロセレクト系、モード系を除いた7タイプをカバーしていた。 インベントリーデータを見ても、6月20日時点の「アベイル」の展開型数はカジュアルウェアだけで7,200、インナーや雑貨まで加えた総計では8,600にも達する。SKU数では同31,550、38,950にもなるが、在庫点数はカジュアルウェアで21,000、総計で33,700に過ぎない。カジュアルウェアでSKUあたり0.66、総計でも0.86と、各1在庫にも届かない。 「しまむら」同様にSKUあたり各1投入、補充無しを徹底していることに加え、月中に新規商品が投入され月初在庫商品が売り切れていくため、インベントリーデータでは1を割り込んでしまうのだ。実際、SKUあたり2点以上、投入したのは6月20日在庫全38,950SKU中1,160SKUと2%に過ぎず、カジュアルウェアでは定番ジーンズ等約1%だけと言う。後方にも一切、バックストックは無く、早朝にナイトデポに搬入された当日品出し商品しか存在しない。 鮮度とバラエティに徹した調達バイヤーはトータル・コーディネイトを重視してアイテムで分けず、レディスのアメカジ系とエレガンスカジュアル系、メンズのアメカジ系とフレンチカジュアル系、靴&服飾雑貨、インナー&ソックス、キッズの七人で分担。月火が持ち込み企画の商談日、水木金が展示会や現物調達のメーカー廻りという週単位のスケジュールで動いている。仕入先は全部門計180社ほどで毎年、20社ほど入れ替わるが、バラエティを確保するため、絞り込む訳にはいかないようだ。 各1投入、補充無しが原則と言ってもNBジーンズやインナー、ソックス、ストッキング等は例外。NBジーンズでは週単位に補充発注を行っているし、インナーの一部やソックス、ストッキング等はオンラインVMIで自動的に補充されている。 靴だけはカジュアルウェアのようにリードタイムを短縮出来ず、補充分まで発注して確保せざるを得ない状況で、鮮度とバラエテイのメカニズムがうまく回っていない。キッズもメーカーの期中企画がほとんど期待できず、メンズやレディスのメーカーに別注している状況で、やはりメカニズムが回っていないようだ。 販売効率と在庫回転の課題商品回転は年5回転だが、NBジーンズとスポーツシューズを除けば6回転、レディスカジュアルだけだと7回転している。売上シェアと在庫シェア等から推計したカテゴリー別の商品回転を見ると、高効率なのがレディスのエレガンスカジュアルで9.3回転、メンズのフレンチカジュアルも6.0回転。低効率なのが靴・小物で3.5回転、メンズのアメカジも3.8回転に留まる。インナー・ソックスも5.9回転と、このカテゴリーとしては異常に低回転だ。キッズは売場シェアが3%と扱いが小さいにしても、4.8回転は低すぎる。 メンズとレディスの売場シェアがほとんど同じなのに在高はメンズがレディスの1.46倍、売上シェアは逆にメンズがレディスの九掛けというアンバランスを是正してメンズを圧縮、レディスを拡大すれば、販売効率も在庫回転も一気に改善出来る。百貨店におけるメンズ売場がレディス売場の4掛けから三分の一という今日、「アベイル」のメンズカジュアルが過大であることは間違いない。 キッズは売場面積シェア10%程度まで大幅拡張するか撤廃するか、トゥイーンズ売場に大変身するかの選択になるが、「アベイル」の高感度な客層とキッズカジュアルの調達背景の限界を考えればトゥイーンズ売場を選択することになろう。インナー/ソックスや服飾雑貨の低回転は技術的なものだから、その気で改善すれば8回転以上するようになるはずだ。 問題は靴、特にスポーツシューズだが、現状ではバッタ調達を組み合わせでもしない限り改善は難しい。NBでは高鮮度商法が成り立たないから、SPA型のOEM調達に踏み込むか、NBを捨ててカジュアルメーカーの高鮮度商品に絞り込むか(レディス中心になるが)、決断するしかないだろう。 コーディネイト・ミックスの運用が課題商品の発注時に4ケタのテイストコードを設定してタグに印字しておき、毎月、バイヤーが陳列実験をしてデジカメで撮影。店長会議でテイスト分類の組み換えとディスプレイを指示しているが、トレンド変化の速さと店舗数の拡大に追い付けず、テイスト分類やコーディネイトがかなり混乱している。これでは売り物の鮮度とバラエティを表現し切れないし、選びにくい事このうえない。 これだけのバラエティを活かして毎週のようにインパクトあるテイスト分類とコーディネイト・ミックスを組んでいくのは一流セレクトショップの第一級コーディネーターでも至難の技で、バイヤーが立案して各店のパート&バイトにやらせていこうという「アベイル」の体制には無理がある。多店化とともにプロパー消化率も低下傾向にあるが、その要因がここにあるとしたら致命的なネックとなりかねない。 「しまむら」式の属性分析を活用しても、鮮度が命のカジュアルでは属性要素を毎月のように修正していかなければ役に立たないし、その結果をテイスト分類とコーディネイト・ミックスに組んでいく高感度な専門スタッフを欠いては「アベイル」の魅力は表現しようがない。鮮度とバラエティ、その新鮮なコーディネイト・ミックスは「アベイル」の命だけに、多店化の障害とならないよう万全の対策が急がれる。 収益性は改善できるか「アベイル」の物流や店舗運営等の基本的オペレーションは「しまむら」と同じだから、多店化とともに営業経費率は「しまむら」のそれに近付いていく。が、実際の必要商圏は3〜4万世帯と初期の計画より大きくなっており、その分だけ家賃負担が重くなるし、コーディネイト・ミックス運用のコストも加わるから、「しまむら」の営業経費率22.1%+3.5%+会員カード値引き3.4%、計29%を下回るのは難しい。それでいて営業利益率8%を実現するには粗利益率は37%必要で、マークダウン・ロスが同じなら値入れ率は46.7%確保しなければならない。 超百店級のカジュアルチェーンの値入れ率はメーカー企画品仕入れでも50%を超えるから、「ユニクロ」級からそのワンライン上ぐらいまでに価格を押さえて生鮮カジュアルを別注調達するとして、46.7%という値入れ率は無理の無い水準と考えられる。この値入れを確保したからといって、鮮度やバラエティが損なわれるリスクはまず無いと見てよいだろう。 「アベイル」はSCに出店出来るかが、現実には大型SCの不動産費負担は重く、利幅の厚いSPAばかりが顔を揃えることになる。そればかりか、利幅の厚いSPAを低家賃で優遇し、利幅の薄い品揃え店には高い家賃を押し付けるのが一般的傾向だから、ますますSPAばかりが並ぶことになる。これではバラエティも鮮度も期待できないから、SCの客層は片寄ってしまう。 「アベイル」にしても粗利益率は35%と薄いから、不動産費負担力は売上歩合一本でせいぜい8%まで。SC出店が成り立つかどうか、ギリギリのところだろう。生鮮カジュアルのバラエティを満載した300坪級スーパーストアの集客力と販売力をデベロッパーがどこまで評価するかだが、導入すれば画期的な効果を発揮するに違いない。 |
![]() ※誌名のないバックナンバーは「ファッション販売」です。 | |
| 「販売革新」2001年7月号 | 短期連載-最終回 『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』 “標準化で時代の求める提供方法をパッケージせよ” |
| 2001年7月号 | 『絶好調ユニクロに死角はあるか』 |
| 2001年7月号 | 『最新リミックスMD技法のすべて』 |
| 「販売革新」2001年6月号 | 短期連載-2 『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』 |
| 「商業界」2001年6月号 | 『イトーヨーカ堂“減収減益”は止まらない』 |
| 「販売革新」2001年5月号 | 短期連載-1 『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』 |
| 2001年6月号 | 『価格競争の終焉でファッション消費が復活する』 |
| 2001年4月号 | 『郊外百貨店MDの問題と革新』 |
| 2001年3月号 | 『早くも撤退が危ぶまれるカルフールに学ぶべきこと』 |
| 2001年2月号 | 『個の多様化とバリュー革新の新世紀へ 今こそ反撃に転ぜよ』 |
| 2001年1月号-1 | 『SPAの教科書「GAP」の凋落とその要因』 |
| 2001年1月号-2 | 『ワールドの郊外SC戦略業態「タイプフェイス」の実力を検証する』 |
| 2000年12月号-1 | 『最新SC診断 イオン岡崎SCと岡崎西武の完成度』 |
| 2000年12月号-2 | 『無印神話崩壊の危機』 |
| 2000年11月号 | 『西武百貨店“SP21”プロジェクトに見る百貨店自主MD売場の成功条件』 |
| 2000年10月号 | 『日本の百貨店幹部に告ぐ。高付加価値・低コスト構造への転換を急げ』 |