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ファッション販売2002年1月号

『付加価値型SB戦略でV字回復のポイント』

(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


V字回復した中間決算

 ポイントのV字回復が際立っている。2001年8月中間期の売上高は70億3600万円と前年同期比22.8%も増加。前年上半期は6.1%減、同下半期も6.3%減と落ち込み続けていた既存店の客単価が今上半期は0.7%と増加に転じ、同じく客数も前下半期の4.7%減から2.1%増と回復。結果、前年上半期4.5%減、同下半期10.7%減と水面下で推移してきた既存店売上が2.9%増と増加に転じ、天候要因や曜日進行の追い風が加わった9月度は29.2%増まで加速している。
 8月中間期の粗利益率は52.9%と前年同期比3.3ポイントも上昇し、逆に営業経費率は42.2%と1.3ポイント低下。99年2月通期決算では3.3%まで落ち込んでいた営業利益率も10.7%まで上昇し、過去最高率に達した。このV字回復はどのような施策によって実現されたのだろうか。

立地と客層に多業態対応

 第一が立地と客層に対応した多業態化によるロスの圧縮とチャンスの拡大。標準化した単一業態を様々な立地に対応させ、どの立地にも客層にもジャストミート出来ないでチャンスを逸っしてロスを肥大化させるナショナルチェーン展開を避け、幾つもの高感度なジュニアチェーンを開発してキメ細かく立地のニーズに対応している。
 多業態化は92年3月のレディスカジュアル「ローリーズファーム」に端を発し、94年9月には大型ファミリーストアの「ザ・ワークス」、99年7月には裏原系ストリートの「エヌフィロー」、同年9月にはアウトレットの「ナインブロックス」、そして2001年2月には裏原系ボーイライクの「ヘザー」、3月には『和+アジア』をモチーフにした団塊ジュニア対応の癒し系カジュアル「ハレ」を開発。「ザ・ワークス」は脱NBのSB戦略と立地対応の業態再編でアジアンエスニック調のカジュアルに性格を変え、SBと一致した「グローバルワーク」に店名を変更した。
 98年2月期には51.7%と半分を超えていた「ポイント」の売上シェアは今中間期には14.5%まで低下し、替わって「ローリーズファーム」が23.6%から48.3%まで上昇。99年夏以降にスタートした「エヌフィロー」「ヘザー」「ナインブロックス」「ハレ」の4業態も既に計15%のシェアに達している。
 この業態再編によって単業態を立地に合わせて運用するナショナルチェーン型の中庸路線に決別し、『MDに合う店しかやらない』というシャープなMDが可能となったのだ。

付加価値型SB戦略への転換

 第二がNB(ナショナルブランド)からSB(ストアブランド)への転換によるポジションと収益構造の確立。99年2月期時点で既にSB比率95%に達していた「ローリーズファーム」に続いて、「グローバルワーク」も99年2月期の30.4%から2000年2月期64.6%、2001年2月期88.1%と急拡大して今中間期には92.9%まで上昇。今期から「ポイント」や「エヌフィロー」でもSB比率が急上昇しており、全業態トータルで98年2月期の28.0%から今中間期には84.2%まで一気に上昇した。  売上の中核を占めていたナイキやGショック、アビレックス、ノースフェイス等の人気NBを急圧縮してSBへ転換する過程では売上が大きく減少し、二年近く販売成績が低迷する踊り場となった。中でも苦戦したのが「ザ・ワークス」で、一時は「ユニクロ」を意識して万人向けのベーシックに流れ、二割近く単価が下がって既存店売上が大きく減少した。が、今夏以降はキャラのあるSBが効いて客単価も上昇し、V字回復軌道に乗った。NBで作ったピーク売上にはまだ届いていないが、SB化による付加価値創造で収益力はNB主体の時代を大きく超えるに至った。  NB主体の時代はSBもほとんど『メーカー別注』だったがメーカー企画との同質化を離脱出来ず、調達コストの高さもあって見直しを余儀無くされた。現在は『商社経由OEM調達』のオリジナルが約80%を占め、『工場直接発注』と『メーカー別注』が各10%という調達構成に変化している。  当初上代対比の調達原価率はかつての『メーカー別注』で46〜47%。現在は『工場直接発注』で30%、『商社経由OEM』で35%、『メーカー別注』で43%と、SBの平均調達原価率は35%強まで低下している。SB比率の上昇と低コスト調達方法へのシフトによリ、全社粗利益率は96年2月期の36.2%から2001年2月期は49.7%、そして今中間期は52.9%まで上昇したのだ。  このような付加価値創造型SB開発が、社内外に一人のデザイナーもパターンナーも抱えることなく短期に実現された事には驚く他は無い。総ての企画は各業態の数人のバイヤーMDによって行われており、雑誌切り抜きのイメージボードや素材見本、サンプル商品の提示から、サポートする商社がデザイン、素材・副資材、生産仕様を組み上げてくれるという(取り組み商社は業態毎に最適企業を選定)。それでこれだけの付加価値SBが開発出来るのだから、ここ数年で開発背景が一変してしまったという事だ。  アパレルメーカーのSPA化による生産系人材の流出と生産のグローバル化により、商社がエレクトロニクス業界のEMS(付加価値創造型仕様開発・生産受託サービス業)同様のAMSと化し、ポイントのような中小ロットのSB開発までサポート出来るようになったのだ。

ブランドビジネスに匹敵する付加価値創造事業へ

 このような抜本転換によってポイントはカジュアル専門店という領域を越え、ブランドビジネスに匹敵する付加価値創造事業へと変身しつつ有る。事実、「ローリーズファーム」や「エヌフィロー」「ヘザー」はブランドショップと並んで丸井やラフォーレでも展開されているし、「エヌフィロー」は裏原宿キャットストリートにフラッグシップを構えている。ファッション誌とのタイアップもブランドビジネス同様に仕掛けており、各業態の知名度もストリートブランドの一角を占めつつある。
 ポイントのV字回復と変身のシナリオは全てナショナルチェーンのセオリーを否定する所から始っており、既成の事業モデルに囚われない創造性が活路を開いたと賞賛される。付加価値創造型カジュアルチェーンどころか、セレクトショップから裏原系マイナーSPAの手法まで駆使して新たなポジションを創造するポイントの先鋭かつ柔軟な戦略展開は、これまでのカジュアルチェーンには見られなかった画期的なものであり、規模の大小を問わず、多くの専門店やメーカーにチャンスを示唆するものだ。




※誌名のないバックナンバーは「ファッション販売」です。

『ピカソ一号店に見るドンキの可能性』2001年12月号「商業界」
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『SCの明暗を分ける要件・・・イオンSCと他量販店系SCの差』2001年10月号「商業界」
『ファッション・バラエティストアを開発せよ』2001年10月号
『大型専門店導入のキーポイント』2001年9月号「URERU」
『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』2001年7月号「販売革新」短期連載-最終回
『アベイルはポストSPAの星となれるか』2001年9月号
『絶好調ユニクロに死角はあるか』2001年7月号
『最新リミックスMD技法のすべて』2001年7月号
『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』2001年6月号「販売革新」短期連載-2
『イトーヨーカ堂“減収減益”は止まらない』2001年6月号「商業界」
『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』2001年5月号「販売革新」短期連載-1
『価格競争の終焉でファッション消費が復活する』2001年6月号
『郊外百貨店MDの問題と革新』2001年4月号
『早くも撤退が危ぶまれるカルフールに学ぶべきこと』2001年3月号
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