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ファッション販売2003年1月号 『ユニクロ復活の条件は業態分割だ』(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔頂点からの転落2002年8月期は二度に渡る大幅下方修正のあげく、既存店売上が28.6%減、売上高は18.4%減の3416億円、経常利益は47%減の547億円と大幅減収減益となり、経常利益率も16%まで急落。2003年8月期も上期の既存店売上を30.5%減、下期を10.4%減と見込み、売上高3000億円(12.2%減)、経常利益420億円(23.3%減)、経常利益率14%とさらなる業績の下降を覚悟している。 プロダクトアウトに徹したSCM戦略の破綻「ユニクロ」成功の原点は極端に絞り込んだ単品構成によるカジュアル流通の工業化であり、企画から生産、店頭展開まで企業都合のプロダクトアウトが徹底されていた。素材とデザインを限定してサイズとカラーを展開するMDの組み方は生産から物流、店頭作業まで一貫して単純化出来、工業的効率を極大化し得るものであった。そこまでプロダクトアウトに徹すれば極端なコストダウンが可能で、ファーストリテイリング社はその多くを品質向上に費やして『低価格ブランドビジネス』を確立し、高収益体質も手に入れた。 が、プロダクトアウトに徹すれば顧客の間口も満足も大きく制限されるし、マーケット変化への対応力も限られてしまう。結果として「ユニクロ」は品揃えの拡充が遅れ、カジュアルの潮流が一変してもサプライ背景の転換に手間取り、危惧された最悪のシナリオにはまってしまった。ファーストリテイリング社は売手都合のプロダクトアウトに徹したSCM戦略の成功とその破綻を演じたのである。 ファーストリテイリング社の対策を評価するあまりに原始的なビジネスモデルゆえにブレーキもハンドルも効かず、マーケットかサプライサイドのどちらかでも状況が一変すれば破綻するリスクは否めなかったが、追い風は3年間続いてファーストリテイリング社は企業基盤を確立してしまった。それはベネトンもGAPも同様であった。 一旦、企業基盤が確立されて資金力と組織力が備われば、ビジネスモデルを進化させて競争力と機動性を高め、ブランドイメージを確固たるものにしていけるし、多業態展開によって成長を加速出来る。急失速したとは言え「ユニクロ」は既にハードルを越えているから、よほどの頑迷さと失策を繰り返さない限り、やがては再加速に転ずる事は間違いない。 英国、中国での事業展開が軌道に乗るのは相当先になろうが、2002年8月期決算発表の席で公表された業績回復策は一点を除けば適確なものと評価される。商品面では1)ジェンダー分離による女性向け商品強化、2)ファッション要素の適度な導入、3)シーズンサイクルの年6回への倍速化と開発期間の大幅短縮、4)ベビーからキッズまで子供向け商品の拡充と展開店舗の拡大、販売面では5)棚割型に徹した現状から魅力的なVMDへの転換、6)スーパースター店長制の深耕による個店対応力の強化、経営面では7)最適生産・販売へのSCM進化、8)カリスマ経営からチーム経営への転換、がその概要である。 このうち1)から5)まではGAP社が進化して来た過程を踏襲したもので、ファーストリテイリング社はこれまでも壁にあたる度に同様な行動をとっている。ジェンダー(性)分離によるレディス強化もベビー〜キッズの拡充も2ヶ月サイクルの年6期展開も棚割を超えた魅力的なVMD戦略も皆、GAP社の実践して来た革新なのだ。ブームの頂点ではGAP社の進化に追い付いたかと錯覚したかも知れないが、壁にあたってみるとGAP社は依然として偉大な先達であった。 そのGAP社も2年5ヶ月も既存店の前年割れが続き、SPA体制を築き上げた偉大なCEO、ミッキー・ドレクスラー氏が十月十一日に退任。ウォルトディズニー社から転じたポール・プレスラー氏にバトンを渡したが、手本とする先達がいないだけに回復のシナリオは読み難い。それだけに前例の無い画期的な革新も期待されるから、その動向にもファーストリテイリング社は注目すべきであろう。 8)カリスマ経営からチーム経営への転換は是非、実行して欲しい事だが、1)〜7)の打開策が順調に実行されれば2004年8月期からの業績回復は確実であろう。それを実行するだけの資金力も組織力もファーストリテイリング社は備えている。私が幾度か指摘した多田裕氏が率いるデザイン研究室の拡充と権限強化も現実になったようだから、回復は以外と早いかも知れない。が、それを妨げる要素がひとつだけ残されている。ローカルやルーラルの生活圏から高感度広域商圏の都心まで広がってしまった店舗網がそれだ。 業態分割が本格回復の条件だ答えははっきりしている。ファーストリテイリング社はこの両者の業態分割を9番目の打開策として決断すべきなのだ。大商圏店舗はファション性を高めて洗練されたVMDに転換し、「GAP」と覇権を争うグローバルブランドに変身させて欧米に拡大する。生活圏店舗はファミリー商品を拡充して大型化するとともに価格をワンランク下げて競争力を高め、現状の棚割型VMDによる購買慣習を維持して国内と中国に展開する。GAP社で言えば「GAP」と初期の「OLD NAVY」のような分担となるのではないか。 この決断が遅れるようだと商品政策、店舗政策はもちろん、組織の混乱まで招いて業績の回復がずれ込んでしまう。早ければ2004年上期と期待される本格回復もその場合は目処が立たなくなるから、早急な決断が望まれよう。 |
![]() ※誌名のないバックナンバーは「ファッション販売」です。 | |
| 『SPAの基本に立つセレクト的VMD表現とその限界』2002年12月号 | |
| 『ラグジュアリーブランドの明暗 =突出するルイ・ヴィトン=』2002年11月号 | |
| 『専門店復活の構図 プロジェクトX成功の条件』2002年11月号 | |
| 『大手セレクトvs.新興包囲勢力の戦局』2002年10月号 | |
| 『トウィーンズブランド満載の109町田』2002年10月号 | |
| 『21世紀の勝ち組パスポートを手にしたワールド』2002年9月号 | |
| 『裏原ビジネスに学ぶ商いの原点』2002年9月号 | |
| 『セレクトショップに学ぶFBのルネサンス』2002年8月号 | |
| 『ジュングループのセレクト戦略』2002年8月号 | |
| 『メガ企業に化ける“しまむら”』2002年7月号 | |
| 『2002秋冬トレンド総括とリミックスMD提案』2002年7月号 | |
| 『今春の百貨店リモデルを総括する』2002年6月号 | |
| 『ベイクルーズの魅力と強さの源泉を探る』2002年6月号 | |
| 『ユニクロの大失速に何を学ぶか』2002年4月号 | |
| 『2002年のビジネストレンド』2002年3月号 | |
| 『PB開発の成功条件』2002年2月号 | |
| 『専門店V字回復の構図』2002年1月号 | |