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ファッション販売2004年11月号
売上向上大作戦 【上】 『売上減少の要因と対策』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔
売上構築の仕組みと売上向上対策
当たり前の事だが、売上は顧客の支持(需要)と商品のデリバリー(供給)で決まる。どんな売れ筋商品でも周辺店に類似商品が大量供給されれば売上が分散してしまうし、独自の人気商品でもタイムリーな供給が伴わなければ売上は稼げない。すなわち、売上は需要と独自性×タイムリーな供給で実現されるものだ。戦略的には「ブランディング×ロジスティクス」の構図と言い換えてもよい。売れない時、そのいずれに問題が在るのか見極めれば、打つ手も読めてくる。
需要はあっても類似商品が氾濫している場合
この場合は、供給の速さが決め手になる。他店より一歩でも早く調達して店頭に供給できれば売上が伸ばせるが、遅れれば価格訴求で処分する事になる。調達の体制から配分・物流の仕組みまで一貫して見直すのが本質だが、知恵も金も時間もかかる。即効を狙うなら、補給在庫を店頭に近い所に移せばよい。
一番近いのは店舗のストック室だが、売場と同額の家賃がかかるスペースをストックに割くのは限界がある。一般に販売効率の高い店ほど店舗面積に占めるストックスペースの割合が高いが、家賃負担を考えれば15%(在庫では30%以上)が限度で、多店舗への効率的供給を優先すれば物流体制を改善して8%未満(在庫では15%未満)に抑えるべきだ。
次に近いのは商業施設の提供するストックスペースだが(当然、家賃は売場の半額以下)、売場からの往復に時間を取られると販売ピーク時間帯では接客機会が損なわれ、売上が減少する場合もある。売筋の補給在庫は店舗裏ストックに、その他は後方ストックにといった使い分けが肝心で、朝夕2回は販売情況を見て在庫移動を行わないと効果が限られる。
店舗裏にせよ後方にせよ、ストックスペースの拡大は必ず非稼動在庫の肥大に繋がる。このような手法を活用すべきは在庫回転日数が高価格帯で60日以下、中低価格帯で40日以下の高効率店に限るべきだ。そんな店は例外的だと言い返したいだろうが、この在庫回転日数以上で欠品ロスが多発するなら、調達/生産・配分・物流のロジスティクス体制に重大な欠陥があるという事だ。即効手法を探すより、最優先の戦略課題として知恵も金も目一杯突っ込むべきではないか。
販売効率の低い店は後方ストック在庫ゼロが原則で、当日入荷品の未店出し分のみでなければならない。それだけロジスティクス体制が効率的でないと、低販売効率店では在庫が回転せず利益が出ない。「低価格商法=ロジスティクス・ビジネス」という大原則をよもや忘れてはいないでしょうね。
顧客支持(客数)が不足している場合
売上は「客数×商品単価×一人当り買上点数」で構築されるが、そのいずれが足を引っ張っているかで原因と対策は異なる。
客数が減少している場合は複数の要因が重なっている事が多く、対策はもっとも難しい。1)店舗立地の衰退、2)競合店増加、3)世代人口やテイスト支持人口の減少、4)ブランドイメージ低下による顧客離れ、5)バリュー競争力低下による顧客離れ、6)品揃えや補給、営業展開などの技術的ミスによる販売機会減少、等が考えられるが、要因が重なる場合は戦術的な対策では解決しない。
1)店舗立地の衰退、には売上回復を望まず、人件費や家賃の圧縮で利益を確保し、撤退/移転のタイミングを計るしかない。
2)競合店増加、には客層やテイスト、価格帯の変更などの転進策も考えられるが、追加投資もリスクも大きい。確実な対策は、販売員と在庫を積み増して正面から切り込むか、営業展開ポジションを変更するかだ。
販売員と在庫を積み増せば、販売機会の増大で売上は確実に上昇する。有力各社の事例を見ても、3年目までは積み上げ効果が望めるようだ。販売員の増員ではピーク時の集中と質の維持に留意し、在庫の積み上げでは自店の領分を出ずにMDの拡充と潤沢な補給によるのが成功条件だ。
営業ポジションの変更は競合店より早く展開するか遅く展開するかという単純な対策だが、経験則から言えば効果絶大だ。前倒して需要を先取りするのが一般的だが、オリジナル商品はともかく仕入れ商品ではデリバリーの前倒しという力技が必要だし、投入の前倒しを売上の前倒しに繋げるキャンペーン/売場訴求/販売の連係も問われる。とりわけ期末処理に関しては早いもの勝ちで(顧客の利益に叶っている)、それだけ次期の立ち上げもリード出来る。 遅く展開する作戦は競合店に需要を先刈りされて成り立ち難いが、実需の長い春期や夏期に特定アイテムで仕掛ける方法はある。実需の短い秋期やクルーズの投入で鮮度の落ちる冬期では避けたほうがよい。
3)世代人口やテイスト支持人口の減少、に対しては安易に自店の領分を出ず、サイズやカラーの拡充、服飾雑貨やインティメイトウェアといったカテゴリーの拡張で対策すべきだ。前者では「アンテーラー・ロフト」、後者では「ギャップ」や「ユニクロ」など、成功事例が多数ある。
4)ブランドイメージ低下による顧客離れ、は時間をかけて顧客の不満が積み上がったケースがほとんどで、表面化した時は手遅れに近い。即効的な対策はまったくないから、新装開店してやり直すか、新手の業態/ブランドを開発して乗り換えたほうがよい。著名ラグジュアリープランドだって、人気が落ち目になるとチーフデザイナーを替え、伸るか反るかのギャンブルに打って出るではありませんか。
5)バリュー競争力低下による顧客離れ、は過剰なブランディング投資や粗利益追求、あるいはソーシング政策のミスで対価格のバリュー感が低下したケースで、4)同様に時間をかけて表面化する場合が多い。ただし4)と違って有効な対策が幾つもある。
まずは原因となったミスを元に戻すことで、ソーシング・ミスなら元のルートに戻して品質を復活させればよいし、割高感が高まったのなら「ルイ・ヴィトン」のように値下げをすればよい。大切なのは固執しない事で、顧客が『割高だ』『低質だ』と言っているのだから、素直に応えるべきだ。たったそれだけで売上が回復するケースが多い。 問題は「ユニクロ」台頭時のように強力な新手が突出したバリュー革命を仕掛けた時で、他の誰もが一気に割高になってしまう。一時は対応不可能に思えても、仕掛けはソーシングにあるわけだから、2〜3年も経てば類似した仕掛けを提供するAMS業者が出揃い、誰もが表面的には大差ないバリューに追い付いてくる。この2〜3年間に仕掛けた側は圧倒的な地位を築いてしまうから後の祭りだが、打撃を受けた側も2〜3年で傷は癒える。今は「ハニーズ」が仕掛けているが、類似したマーケットにいる者は早めにソーシングを抜本変革したほうがよい。なにせ、本気でやって2〜3年かかる事だから。
6)品揃えや補給、営業展開などの技術的ミスによる販売機会減少、は原因さえ理解できれば有効な対策が打てる。品揃えについてはルック提案と単品構成のバランス、回転スポットアイテムと補給定番のバランス、定番アイテムのMD展開軸とスポットアイテムのリンク軸などがミスの要因なら3〜6ヶ月もあれば修正可能だが、ソーシング体制が足を引っ張っている時はもっと時間がかかる。
ここで言うMD展開軸とかリンク軸というのは特定のルックやアイテムをどう展開して売上を拡げ次に繋いでいくかというテクの話で、軸にとる要素と展開する要素の設計で売上が左右される。軸にとるのはアイテムや生地/糸(稀にカラー)、展開するのはカラーや後加工、デザイン、サイズ、編み地だ。生地/糸の手当てと引き付けての加工プロセスが設計の基本になるから、修正に時間がかかるのだ。期中でも流通素材や空き加工場を使って修正は可能だが、品質や面を外すリスクはやむを得ない。
当初に計画した営業展開が天候推移や需要の流れ、競合関係から見て売上不振の要因となっている場合、引っ張るのは容易だが前倒すのは半端なドタバタでは済まない。引っ張るには追加企画の手配と既発注次期商品の投入延期だけで済むが、前倒すとなると在庫の処理や既発注品/新規企画の前倒しなど、荒技力技を駆使しなければならない。
やるなら当座の処分ロスや取引先との軋轢を恐れず、電光石火にやり切ることだ。売上は短期に回復するが、次サイクルの開発仕掛かりに混乱が及ぶのは必至で、3ヶ月を切ってからの前倒しはやめた方が賢明だ。
客単価が落ちている場合
商品単価が落ちている場合と買上点数が落ちている場合では原因が多少異なる。前者では1)同質化に巻き込まれて価格訴求に陥っている、2)提案商品/新規中核商品/実績定番商品/価格訴求品のバランスが崩れている、後者では3)ルック提案にインパクトがない、4)ルック提案と単品構成が繋がっていない、両方が落ちている場合は5)バリュー競争力が低下している、などが考えられる。
1)同質化に巻き込まれて価格訴求に陥っている、では売筋の深追いや安易な調達手法への依存が要因だが、ブランディングやソーシングの本質に関わるだけに回復は容易でない。2〜3年かけて抜本から改革というゆとりがないなら、“旨い速い安い”に徹して調達と補給の頻度を加速すればよい。
中長期の展開ストーリーを立てず、品質や面の多少の難には目を瞑り、速い意志決定でオートマティックに売筋を徹底追求していく。同一品は補給せず、販売サイクルと在庫回転を固定して、次々に目を切り替えていく。週2便を3便に、次は4便次ぎは5便と加速し、全国を1DCから2DC、3DC、4DCへと細分化してタイムラグを極小化していき、販売効率を上げていく。情報システムの進化が続く限り、このプロセスは破綻しないが、補給頻度とDC細分化がコスト的物理的限界まで達すると販売効率も頭を打つ。
大仕掛けなロジスティクスゲームはしんどいという向きは補給頻度を高める程度にしておいて、もうひとつ手が在る。それはNBやCBを部分的に導入して単価アップを図り、同時に脱同質化も狙うという定石化された手法だ。単価と売上は上がるが粗利益率は低下するから、やがては元の売筋追求に戻ることも多い。
2)提案商品/新規中核商品/実績定番商品/価格訴求品のバランスが崩れている、は技術的なミスが要因だが、新規中核商品などの開発には時間が必要だから即効的な対策はない。むしろ、そのようなミスの発生を許した商品計画〜調達の管理体制を洗い直すべきで、放置すれば次シーズンも同じミスを繰り返す事になる。
3)ルック提案にインパクトがない、は商品計画に遡る問題で即効的な対策はないが、スポット商品や服飾雑貨を組み込んで鮮度を出せば売場の印象は改善できるし、販売推奨を連動できれば客単価も上げられる。ロスを覚悟で鮮度のある服飾雑貨やカンフル単品を投入し続ければ、落ち込みを最小限に抑えられよう。
4)ルック提案と単品構成が繋がっていない、も商品計画の問題だから即効的な対策はないが、上記の手法で小幅な改善は期待できる。むしろ2)同様、次シーズンへ向けてミスを起こさない仕組みを構築するのが賢明ではないか。 5)バリュー競争力が低下している、場合の客単価低下は客数減少と同時に起こって売上の落ち込みが大きい。対策は客数減少の5)と同様で、ソーシング・ミスなら元のルートに戻して品質を復活させ、割高感が高まったのなら値下げをすればよい。
売上の落ち込み巾が大きく小手先の対策ではブレーキが効かないから、当座の粗利益率は無視して値下げか原価アップでバリューを回復させ、売上減を食い止めてキャッシュフローを維持するのが先決だ。躊躇して低迷が深まれば、回復がますます困難になる。
※次回【下】は『売上向上への店頭在庫運用術』
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