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小島健輔の最新論文

ファッション販売7月号
小島健輔の経営塾7
『配分・補給/消化管理で利益を実現する』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


 前回は調達手法に言及したが、如何に上手く調達しても多店舗への配分・補給と消化管理が稚拙では売上も利益も思い通りにはならない。調達段階で確保した値入れも消化率が低くては大きく目減りしてしまう。「利は元にあり」とか言うが「利は消化に在り」も片面の真実なのだ。今回は配分・補給、マークダウンや店間移動といった消化管理の手法と勘所を再考してみたい。

配分の基準

 適正な配分を行うためには店毎に特性を検証して基準を定める必要がある。その基本は以下のようなものだが、販売データを基に年度または半期毎に見直していく。
 1)フェイス量
 陳列什器の規格を定めたデジタル方式ではラック数、固定什器のアナログ方式ではハンガーラックと棚の総長が基準となる。両社を組み合わせたデジアナ管理も可能だ。展開商品量(カセット数/陳列点数)の基準となるもので、販売効率に応じてデジタル方式では各カセットの棚割タイプ、アナログ方式では一定長あたりの陳列点数で在庫量を調整する。
 高効率店/小型店ではラック密度を上げてフェイス量を増やし、低効率店/大型店ではラック密度を粗にしてフェイス量を圧縮するのが原則。店舗によって基準フェイス量が大きく異なると配分が困難になるから、なるべく平準化する事が肝要だ。
 2)販売効率と回転日数
 デジタル方式では規格ラック当たり、アナログ方式では坪当たりの販売効率が基準となる。店舗や時期によって販売消化の勢いが異なるから、月度/週度のサイクルでカテゴリー別の回転日数と販売効率の変化を掴んでおく必要がある。年度/半期の基準をベースに、実際の配分は直近のカテゴリー別回転日数に同調させるのが基本だ。
 3)その他の特性指標
 店舗によってサイズバランスが異なるケースがあリ、年度/半期の販売データに基づいてタイプを設定する。データには現れにくいがフィットの特性が片寄るケースもあるから、「細身品番不可」といった注意事項を設定する。価格特性が片寄るケースでも「ハイエンド不可」といった注意事項を付記しておく。

配分のスタンス

 配分には相反する二つのスタンスがある。ひとつは投入総量の最速消化を優先する傾斜配分のスタンス、ひとつは各店の品揃えバランスを優先する平均配分のスタンスだ。前者は直近のカテゴリー別回転日数に同調して高回転の店に厚く配分するもので、総量の消化は最速となるが低回転の店には商品が回らず、店舗間格差が拡大してしまう。後者は消化回転に拘わらず平均的な配分を行うもので、品揃えが平準化して店舗間格差も是正されるが、総量の消化速度は遅くなってしまう。
 どちらのスタンスを採る場合でも、もう一方のスタンスによる歯止めをかける事が必要。前者では傾斜配分の回転同調係数を緩和したり投入量の上限下限を設定し、低回転店舗でもミニマムながら品番が揃うように配慮する。後者ではカセットや品番毎に高回転型/中回転型/低回転型のSKU組み合わせを設定し、回転同調に近付けるよう配慮する。同じ業態でも、回転が良い時は品揃えバランスを優先し、回転が悪い時は消化速度を優先するといった状況対応も必要だ。
 
射程距離と投入頻度

 消化の精度を高めるには企画から投入までの射程距離を短くするのが確実だが、備蓄素材軸のQRを組まない限り商品の完成度は低下しがちだ。射程距離と完成度のバランスを考慮すればOEM調達で6〜8週、開発調達で8〜12週というのが平均的な射程距離だが、発注ロットを大きくすれば(コストは下がる)これより長くなるし、ロットを小さくすれば(コストは上がる)これより短くなる。
 消化回転を飛躍的に高めようとするなら、投入ロットを2週消化分程度に抑制して週単位に補正投入していくべきだ。発注ロットが小さくなってコストは上がるが、消化回転と販売効率は格段に改善される。ここ数年のポイント社の売上と利益の急激な伸びは、この投入手法によるところが大きいのではないか。
 発注と初期投入の多頻度小ロット化に加え、ポイント社では補充投入も高頻度高速化。物流デポをエリア毎に配して毎日自動補充・翌日店着体制を確立している。米国ギャップ社ではダウンタウンの高回転店舗に対してコンビニ並みの1日2便体制で補充しているし、高回転で名高い伊勢丹新宿本店ではブランド側に対して近接デポからの分単位の補充を要請している。
 大ロット発注の売り減らしや低頻度補充では消化回転の改善は望めない。これまでの常識を超えた多頻度発注・高速補充体制を仕組んでみてはどうか。  

店間移動とマークダウン

 補充投入と同様、店間移動もコンピュータプログラムで毎日、自動指示して定期便で即移動すべきものだが、しまむらのような自前の物流体制をもたないと物流費で足が出てしまう。ゆえに多くの企業では一定以上の回転悪化の場合に発動するに留まっており、店間移動しないという企業さえある。
 消化回転を向上するには、週度でも隔週でもよいからルーチン化したい。消化に一定以上のバラつきが出た商品をコンピュータがSKU単位にリストアップ。移動範囲や移動先店舗を絞ってシュミレートし、合理的な移動を算出する。移動先店舗を集約すれば宅配便を使っても足は出ないはずで、むしろ店舗スタッフのピッキング手間が問題になる。アドレス管理/棚割管理をやっていれば手間は知れているが、アナログ管理だと対象商品を捜してピッキングするのに相当な手間がかかる。日頃からインベントリーコントロールのインフラを整備しておくべきなのだ。
 百貨店アパレルなどでは店間移動商品を一度、物流センターに集約して再出荷するプロセスをとっているが、これでは物流費もリードタイムもピッキングも二重にかかる。タグの付け替えや再検品が必要なためであろうが、コストに合わない事はなはだしい。委託商売でない限り、店間移動は移動先店舗へダイレクトに行うべきであろう。
 相当な仕組みを組まないと効率的な店間移動は難しいから、各店舗でマークダウン処理する企業が多い。それもバイヤー/MDあるいはディストリビューターがデータを見て品番単位に一斉処理するのが一般的ではないか。が、店舗によってはまだプロパーで通ったり、同一品番でも色やサイズによっては処理の必要がなかったりする。商品は現金と同じなのだから安易に一括マークダウンせず、店毎/SKU毎に行うべきなのだ。まず再編集をかけて消化を促進し、その上で店毎/SKU毎に厳選してマークダウンすべきであろう。
 そのようなスタンスに立つなら、バイヤー/MDあるいはディストリビューターがマークダウンを発議するにしても、実施タイミングとSKUの選別は店舗に任せるべきではないか。
 ブランディングを重視する場合は各店舗でのタイムリーなマークダウンはせず、対象商品をアウトレット店やエリア毎の売り切り店舗へ集約してからマークダウンしたり、期末まで格納してから特定店舗や特設会場でセールにかける。ドミナント政策をとる店舗布陣ではエリア毎にフラッグシップ/Aクラス店/Bクラス店/売り切り店を位置付け、過剰在庫をエリア内で集約移動しながらマークダウンしていく。フラッグシップでは期末以外はマークダウンせず、おもにBクラス店や売り切り店でマークダウンして売り切って行く。
 フラッグシップ店/Aクラス店はコーディネイト訴求重視で内装費もかけるが、Bクラス店/売り切り店は単品訴求重視で内装費も圧縮する。ギャップでは両者で明らかにルックVPとIPのバランスが異なるから、どの位置付けの店か一見して解る。
 貴社ではこのような店舗の位置付け/布陣を行っているだろうか。それを欠いてはエリア内での効率的な店間移動とマークダウンの組み合わせは成り立たない。高度なコンピュータ・プログラムや大きな物流投資の前に、まずはこの店舗布陣を構築すべきではないか。と言うわけで、次回は出店政策を取り上げることにしよう。  



※誌名のないバックナンバーは「ファッション販売」です。

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