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小島健輔の最新論文

ファッション販売9月号
小島健輔の経営塾9
『VMDの本質と運用を知る』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


 VMDについては『見えるマーチャンダイジング』と『ブランディングへの解る見えるマーチャンダイジング』(いずれも商業界刊)で体系的に提示したが、最近の風潮を見ているとディスプレイと混同されたり運用体系が無視されたり美術的な表現が軽視されたりと、上っ面のままごとのように退化している嫌いがある。この誤てる風潮に歯止めをかけ、マーチャンダイジングの展開を適確に運用表現して販売消化とブランディングに直結させるべく、COOの方々にVMDの本質と運用の再確認を求めたい。

VMDの三面性

 VMDには1)水平的品揃え表現、2)時系列的品揃え表現、3)販売プロセスとブランディングの環境表現、という三つの側面があり、それらがクロスしてVMD体系が成り立っている。その洗練度は美術的表現技法によって左右され、建築的なレイアウトや舞台美術的空間表現、陳列やVP/IPの韻律、絵画的カラーグルーピングや色配列などが競われる。これらはVMD以前に美術的素養としてマスターされている事が必要で、売場スタッフやVMDスタッフの美術研修(特に色とフォルム)が不可欠だ。
 1)水平的品揃え表現とは一時点を捉えての品揃え表現であり、商品の階梯分類と配置、それを表現するVP/IP、ラック内の棚割からなる。階梯分類とはカテゴリー/テイスト/シーン/デザイン/カラー/サイズなどの分類順であり、品揃え表現上も購買誘導上も極めて重要だ。棚割はそのラック内の配列表現であり、補給運用(2の領域)と密接に関連する。
 コーディネイト表現もこの領域で、1)クロス・セットアップ/マルチ・セットアップを含むセットアップ系、2)モノ・コーディネイトを含む定形コーディネイト系、3)異素材着回し型のマルチ・コーディネイト系、4)同素材着回し型のコンポーネンツ系などからなり、それぞれのMD構造に最適な陳列手法が工夫されている。コーディネイト表現には美術的技法に加えてモードトレンドの影響が大きく、鮮度あるフィットと面コントラスト、配色表現が求められる。
 2)時系列的品揃え表現とはシーズン進行による新商品の投入と旧商品の売り切り、販売進行と在庫情況に即した最適な構成と表現であり、計画的なストーリーと情況対応の再編集運用からなる。計画的なストーリーでは投入と補給、消化回転の整合が重要で、再編集や一部引き揚げ、店間移動などによって強制回転させていく体制が求められる。
 情況対応の再編集運用には様々な技法があり、単品ではカセット再編や色組み/サイズ組み、コーディネイトではルック組み換えやマルチ・エクスポーズ(同一店内多重露出)、ランウェイ・ラックやルービック・キューブ棚への組み込み消化、また、単品訴求とコーディネイト訴求の組み換えなど、活用すれば確実に消化が加速する。
 補給運用を前提とした棚割も時系列的品揃え表現であり、補給方法によって台帳型(同一商品補給)と心太型(類似商品補給)が在る。販売訴求やフェイス管理はもちろん、品出しやピッキング上も不可欠な技法で、きちんと組んでおかないと作業が手間取る。
 3)販売プロセスとブランディングへの環境表現とは主に店舗設計時のレイアウトと環境デザインに関わるもので、ブロック⇒カテゴリー⇒カセットの誘導レイアウト、姿見やお見置き台、フィッティングの配置と販売空間の設定、それらに関わる照明配置などを適確に組まなければならない。環境デザインに関しては美術的領域に属するが、建築的フォルムと様式/素材の統一、販売プロセスのレイアウトとの整合はチェックすべきである。
 
誰に何をやらせるのか

 VMD体系は以上のようなものだが、実務で成果を上げるには組織の誰に何をやらせるのかが肝要だ。COOとしては、それを徹底しなければならない。
 まずMDには企画カセット毎に補給とフェイス管理手法を明確にさせ、台帳型ではSKU配置、心太型ではフェイスパターンを指定させる。什器仕様を標準化しておけばフェイスパターン表から選択するだけで指定出来るが、カラー展開などフェイス訴求を重視するカセットでは色配列まで設計する必要がある。
 ビジュアルマーチャンダイザーには販売サイクル毎に標準レイアウトと各カテゴリーのVP/IP、フォーカル・ウォールやランウェイ・ラックの配列、ウィークリーのディスプレイを設計させ、イントラ・ネットへ上げさせる。各店には陳列した結果をデジカメに撮ってネットに上げさせ、必要な修正指示をするとともに優秀例は一斉メールで推奨したい。
 店舗の現場には色環表や棚割パターン表などの基本ツール、VP/IPの組み方や陳列ルール、再編集手順などを記したVMDマニュアルを配付し、シーズン毎にスタイリングの組み方などを加えて研修とOJTを徹底したい。本部からの下達指示を鵜呑みさせるのではなく、技術を修得させて情況対応出来るように育てる事が肝要だ。技術の向上を評価する検定制度や優秀店舗の表賞を実施すれば、ゲーム感覚で技術修得が加速する。
 私の経験からすれば、現場がVMD技術を修得するのは決して難しくない。基礎的な知識と技術を与え、自分で考え組み立てるようOJTを重ねれば、 意外と短期で修得してしまう。現場はもともとVMD運用が大好きだから、知識と技術を与えれば容易に化けるのだ。最初から最後まで解らないのは本部の管理職だけなのかも知れない。



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