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販売革新2002年1月号

『イオンVSイトーヨーカ堂 GMS戦略を比較する』

(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


GMSの二強が轡を並べた大和オークシティ

 昨11月28日、小田急江ノ島線鶴間駅から東に約400m、東名横浜インターから西に約3kmのいすず自動車大和工場跡地に大和オークシティがオープンした。店舗面積はイオン大和SC29,177平米、イトーヨーカドー大和鶴間店22,000平米の計51,177平米、駐車台数はイオン1,824台、イトーヨーカドー1,723台の計3,547台と、大型店出店空白期間入り後に開設されたSCではイオン東浦SC(56,334平米)に次ぐスケールだ。
 注目されるのはイオンとイトーヨーカ堂が古淵(相模原)以来、8年ぶりに歩を合わせて出店した事。マイカルが破綻し、ダイエーも先行き不安を払拭出来ない現在、GMSの覇権を争うのがイオンとイトーヨーカ堂である事は衆目の一致するところ。その両社が同一商業施設に揃ってGMS業態を出店したのだから、注目されて当然であろう。
 ブリッジで繋がってはいるもの別々に開発された事実上、並立する別個の商業施設である事は否めないが、開店直後はブリッジを行き来する客で何度もパニック寸前になる等、客側はひとつの商業施設と受け止めている。建築位置を合わせてブリッジで繋ぎ、開店日を合わせるだけでも両社の調整は大変だったようで、ブリッジ上の混雑をベンチを移動して解消する算段さえつけられなかった。
 両社のSC構成の考え方、GMS業態の方向性の違いが露骨に出ている反面、互いに学び合って近似した部分も見られるなど、極めて興味深い。SC構成では、イオンが独立したモール構造にこだわって、窮屈な三角型モールに変則的なテナント配置というギリギリの着地になってしまった一方、イトーヨーカ堂も旧態な箱型コンセ配置からは一歩、脱却して一直線のモールを通したものの、窮屈な通路で客が押し合う情況を招くという、別々な施設計画の無理が露呈していた。それは駐車場への出入りでも同様で、オークシティ周辺の道路はパニック的な渋滞が長時間に渡って続いていた。ひとつのSCとして開発出来なかったゆえとは言え、これほどの混雑と渋滞を招く大型商業施設が果たして必要なのか、考えさせられる事例と言えよう。  

 

対極と近似の両社のGMS

 GMS業態についても、対極と近似の両面が見られる。
 イオンのGMSは最近の疑似スーパーセンターたるニューニューGMS路線上のもので当然、各フロアともモールに面した中央部分に集中レジが配置されていたが、壁面のカテゴライズされた売場から集中レジへの誘導表示はやや強引で不親切な印象を免れない。集中レジを徹底し切るのは困難なようで、配送やクレジット処理を要する家電等の高額商品の売場では個別対応のレジカウンターが設置されていた。
 合理性を欠く高い天井までの商品陳列も消え、柱巻きはイトーヨーカ堂とほぼ同じ270センチまでの陳列・演出、300センチまでのサインボーダーという在来型に後退。戦略的アドバンストと現場の現実との現段階での妥協点が見い出されていた。
 イトーヨーカ堂でも二階の肌着売場と三階の日用雑貨売場でイオン流の集中レジ方式を導入していたが、他の売場ではこれまでの個別売場精算方式を踏襲。柱巻きや壁面もこれまでよりは上部までディスプレイされていたが合理性の範囲内で、270センチまで陳列・演出、300センチまでのサインボーダーと、期せずしてイオンと同じになっていた。
 このように表現すると両者は随分近づいたように思えるかも知れないが、実際の印象は大きく異なる。それは両者が志向するGMSの姿が根本的に異なる事に起因している。
 イトーヨーカ堂の二階ではスポーツウェアで「ナイキ」と「アディダス」、スポーツシューズでは両者に加えて「プーマ」「ニューバランス」「フィラ」「スケッチャー」等、アダルトカジュアルでは「マンシング」「クロコダイル」と各売場で人気NBを強力に打ち出し、「ピコ」のファミリー展開ショップをエスカレーター前に設置。一階の婦人服でもカシミヤやアンゴラのファー付きコートを強力に訴求していた他、各所でベンダーと組んだブランド訴求を展開。これまでの単品集積陳列に加えて、百貨店平場のようなコーディネイト演出やSPA流のマネキン群演出にも力を入れていた。
 「IYベーシック」等による価格訴求や単品集積も各所で展開されていたがNB訴求や品質訴求、華やいだコーディネイト演出の方が目立ち、疑似百貨店志向という方針が如実に現れていた。
 一方のイオンではNBは強調されず、カテゴリー毎の品種品目構成と迫力ある単品集積が重視され、季節商財の訴求が徹底されていた。百貨店的なディスプレイ演出は限定的で、ひたすら合理的に標準化された迫力ある単品集積陳列と天井までの壁面演出に注力。500円フリースの山積みを筆頭に「トップバリュー」による低価格訴求が各売場で前面に打ち出され、エブリデイ・ロープライスのスーパーセンター志向が色濃く現れていた。
 ともにGMSという枠内にありながら、両者は正反対の方向を志向している。それぞれに調達や物流、店舗運営での矛盾を抱えながら、GMSという殻から抜け出そうとしているかに見えるが、イトーヨーカ堂はGMSの枠を抜け出す気はさらさら無く、枠の中での時流対応と効率を追っているに過ぎない。イオンは本気でスーパーセンターを志向しているのかも知れないが、やればやるほどSC戦略との矛盾が肥大していく。広域から集客して成立する大型SCはアンカーに疑似百貨店を必要としているし、スーパーセンターはエブリデー・ロープライスに徹して足元商圏の制圧を志向する。イオンSCとイオンGMSは、まったく逆を向いているのだ。

決算に見る両者の変化

 2001年2月期決算(単体、以下同)では二期連続の減収となり、16年間守り続けてきたGMS業界営業利益高トップの座をイオンに明け渡したイトーヨーカ堂だが、今中間決算では落ち止まりの兆しが見られる。
 既存店売上は1%減と、2000年2月期の8%減、2001年2月期の6%減からはマイナス巾が縮小。総売上高も2.8%増の7390.9億円と三期ぶりに増収に転じている。粗利益率は27.6%と前中間期から0.3ポイント低下したものの、93年2月期以降、悪化し続けていた営業経費率は26.6%と前中間期から0.2ポイント改善。91年2月期の6.0%をピークに低下し続けていた営業利益率も、テナント料等のその他収入の増加もあって2.4%と前中間期比0.1ポイントの低下に踏み留まった。
 一方、2001年2月期決算では売上高のみならず営業利益高/率でもイトーヨーカ堂を抜き去ったイオンだが(不動産収入と不動産コストを相殺した実質営業利益高では推定137.1億円と、イトーヨーカ堂の194.9億円に届かなかった)、今中間決算では前期の大量出店(GMSだけで19店)にも拘らず総売上は4.7%の増収に留まり、既存店売上も2.9%減と減速した。粗利益率は25.8%と前中間期から0.1ポイント改善、営業経費率は29.5%と同横バイで、営業利益率は1.3%と同0.1ポイント改善されたものの、営業利益高は100.9億円とイトーヨーカ堂(176.9億円)に再逆転されてしまった。
 既存店前年比を部門別に見るとイトーヨーカ堂では衣料品と住関連が大きく回復、イオンでは逆に衣料品の落ち込みが目立つ。粗利益率でもイトーヨーカ堂の衣料品が前中間期比1.9ポイント改善されているのに対し、イオンのそれは0.8ポイントの改善に留まっている。あくまで外部からの推測だが、イトーヨーカ堂が過度な絞り込みを一服させて、既存ベンダーや商社との取り組みで品質とバラエテイの訴求に転じたのに対し、イオンは自社開発の低価格商品に集中してバラエティの減少と単価ダウンを招き、売上を落としたのではないか。
 両者の逆転と再逆転には、もっと本質的な背景も影響している。

接近し再反転した出店立地

 イオンは97年以降、ルーラル立地からサバーブ立地に出店を徐々にシフト。新設GMS平均の5km圏人口は98年2月期の119、889人、99年2月期の126、692人、2000年2月期の137、656人と徐々に増加し、2001年2月期には川口(ダイヤモンドシティ・キャラ)や南砂(トピレックプラザ・コウトウ)等の高密度立地にも出店して207、870人と、97年2月期の86、328人から倍以上になった。しかし今中間期では大店立地法の施行にともなって三川店、明和店、五城目店と再びルーラルに回帰し、大都市サバーブ立地は東浦に限られた。結果、新設GMS平均の5km圏人口は65,469人と、97年2月期の水準すら割り込んでいる。
 一方、ダウンタウンの駅前立地からサバーブに歩を移して来たのがイトーヨーカ堂で、新設GMS業態の平均5km圏人口は97年2月期の476、555人から2000年2月期には274、424人まで縮小し、イオンとの商圏密度格差はかつてほどではなくなった。が、2001年2月期は再び木場店、東大阪店、エスパ川崎店等の高密度立地店舗を出店して平均347、568人と増加に転じ、出店政策の転換を感じさせた。
 SC戦略とニューニューGMS戦略という相反する戦略の矛盾から経営効率が翳り始めたイオンは大店立地法施行を機会に両者の分離を志向し、ダイヤモンドシティは大都市サバーブの広域型SC開発、イオンモールはローカルの広域型SC開発、イオンのGMSはルーラルの広域商圏やサバーブの足下商圏を制圧へと、道を分かち始めたようだ。となれば、イオン系SCのアンカーとして疑似百貨店型GMSを別途に開発するか、百貨店や他社GMSを導入するか、次の手を打たざるを得なくなる。
 イトーヨーカ堂の出店戦略再転換は、商圏密度の薄い郊外店舗の効率の低さと自社MDとのギャップに音を上げ、人口都市回帰の流れに乗って経営効率の読める高密度立地への回帰を決断したものと思われる。とは言え、かつてのようなターミナルに戻る訳ではなく、大都市サバーブの高密度立地に疑似百貨店型の大型店を出店していく事になるだろう。その視点に立つなら、今回の大和店はイオンよりイトーヨーカ堂に適した物件と言うべきかも知れない。

業態革新ではイオンがリード

 2001年2月期末時点で、イトーヨーカ堂の全179店中、開店5年未満の店舗は2割強の41店。対して、果敢にスクラップ&ビルドを重ねるイオンの店舗年齢は若く、開店5年未満の店舗が4割強の150店に達する(非GMS業態含む)。一般的には店舗年齢が嵩むほど成長力は衰えていくから、それだけでもイオンのアドバンテージは大きい。
 店舗資産の入れ替え以上に格差がついているのが業態革新だ。2000年11月の山形南店(14,607平米)を皮切りに実験が進められて来たのが疑似スーパーセンター志向のニューニューGMSで、フロア別の集中チェックアウト、5mの天井高とその高さを利用した単品大量陳列、5m巾の主通路等、新たな試みが取り入れられている。
 2001年1月に二号店となる四日市北店(15,500平米)を開設した後、6月にはワンフロア・ワンチェックアウト方式の五城目店(10,520平米)を開設。五城目店と同規模の通常店舗のレジ台数は約60台に及ぶが同店では28台に収まり、社員数/パート数も従来の半分で済んでいるという。  ワンフロア・ワンチェックアウトのスーパーセンター型店舗までは徹せなくても、フロア毎の集中チェックアウトと長尺レイアウトの提供方法はワンストップ・ショッピング効率と運営効率の両面から不可欠だ。カテゴライゼーションを脱して提供方法の統一に乗り出しているのはニューニューGMS開発を進めるイオンだけで、イトーヨーカ堂を始め、他社はカテゴライゼーションから一歩も抜け出せないでいる。

効率追求が自滅を招く

 イトーヨーカ堂とイオンで大きく異なるのが商品財務体質だ。イトーヨーカ堂は商品回転の速さでイオンを大きく凌駕しており、2001年2月期の商品回転日数は26.1日(16.9回転)とイオンの38.3日(9.5回転)より8割も速い。この高商品回転を背景にイトーヨーカ堂は手形支払いを原則行わず、支払勘定回転日数は26.1日とイオンの55.7日の倍速を上回るが、年毎の商品回転悪化で回転差日数は0.6日と逆回転スレスレまで減少している。回転差資金メリットよりも高速支払いによる調達メリットを優先するイトーヨーカ堂と、巨額の回転差資金を出店投資に活かすイオンという体質差が見える。
 今中間期の部門別の粗利益率(関連会社等への商品供給除く)も、衣料品ではイトーヨーカ堂の38.6%に対してイオンは34.0%、住関連では30.1%に対して21.3%、食品は27.2%に対して23.8%と、いずれもイトーヨーカ堂の方が圧倒的に高い。全社ベースの交叉比率(粗利益率×商品回転率)はイトーヨーカ堂の252.3に対してイオンは125.8とほぼ倍の開きがあり、商品効率という点ではイトーヨーカ堂が依然、遥かに優っている。
 が、効率優先の商品経営がイトーヨーカ堂を追い詰めている事も否定出来ない。効率的な調達政策、すなわち自社都合の品種/品目の絞り込みが品揃えの魅力を損ない、顧客離れを招いて来たからだ。最もその傾向が強いのが衣料部門で、今中間期の既存店売上も4%減と前期の9%減からは改善されたものの、1%の増収に転じた食品、1%減に留めた住関連とは格差がある。イオンの既存店売上も食品の0.1%増、住関連の2.7%減に対して衣料品は8.1%減とイトーヨーカ堂以上に落ち込んでいるが、自社開発強化による品揃えの絞り込みと単価減少の影響が大きい。
 イトーヨーカ堂の衣料部門がようやく行革の弊害を脱して品揃えの魅力を回復しつつあるのに対し、イオンはエブリディ・ロープライスの自社開発戦略が品揃えの魅力を損ない単価を低下させるという弊害を起こしている。トップダウンの戦略アドバンスと売場の現実、その乖離と融合を繰り返す両者の関係は今後とも流動的であり、一時の視点で見るべきではない。
 現在の両者のスタンスと実力を総合すれば、大和のような高密度立地では疑似百貨店政策のイトーヨーカ堂の方が有利だが、人口密度が薄い外郭サバーブや地方都市サバーブではスーパーセンター志向のイオンの方が有利と考えられる。が、両者のスタンスが変らない訳ではない。
 イオンは早晩、GMS業態をスーパーセンター型とSC対応の疑似百貨店型に二分せざるを得ないし、イトーヨーカ堂とて疑似百貨店型だけでは低密度サバーブへの出店機会を捨てる事になるから、IY版スーパーセンターかIY版「コールズ」の開発に着手する事になるかも知れない。その過程で両者がどう変貌していくかで、戦いのシナリオは大きく変ってくるはずだ。





※誌名のないバックナンバーは「ファッション販売」です。

『専門店V字回復の構図』2002年1月号
『付加価値型SB戦略でV字回復のポイント』2002年1月号
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『無印良品の復活は何時か』2001年12月号
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『ファッション・バラエティストアを開発せよ』2001年10月号
『大型専門店導入のキーポイント』2001年9月号「URERU」
『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』2001年7月号「販売革新」短期連載-最終回
『アベイルはポストSPAの星となれるか』2001年9月号
『絶好調ユニクロに死角はあるか』2001年7月号
『最新リミックスMD技法のすべて』2001年7月号
『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』2001年6月号「販売革新」短期連載-2
『イトーヨーカ堂“減収減益”は止まらない』2001年6月号「商業界」
『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』2001年5月号「販売革新」短期連載-1
『価格競争の終焉でファッション消費が復活する』2001年6月号
『郊外百貨店MDの問題と革新』2001年4月号
『早くも撤退が危ぶまれるカルフールに学ぶべきこと』2001年3月号
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『SPAの教科書「GAP」の凋落とその要因』2001年1月号-1
『ワールドの郊外SC戦略業態「タイプフェイス」の実力を検証する』2001年1月号-2