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小島健輔の最新論文

販売革新11月号
『こんな「g.u.」は日本に不要です』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


  ファーストリテイリングの最低価格新業態「g.u.」(ジーユー)が10月13日のダイエー南行徳店/ショッパーズプラザ横須賀店/流山野々下店を皮切りにデビュー。年内にダイエー内13店舗を中心に25店舗を開設し、初年度50店舗/年商100億円を計画している。低価格で名を成した「ユニクロ」のさらに下を潜る低価格業態が如何なるものか、ダイエー南行徳店に取材してみた。

第一印象は驚くほどチープ

 「g.u.」はダイエー南行徳店の2F奥、階段室に遮られた決して好位置とは言えない一角に開店。カラーウォールやVPで化粧はしているものの、プレハブ同然の最低仕様で、最近のモダンになった“SUZUTAN”や“しまむら”に較べれば仮設バーゲン会場のよう。「ユニクロ」よりハンガー陳列がぐんと多いものの、定番ニットなどは「ユニクロ」ライクな台帳棚陳列で、壁面にもアウターのフェイスアウト/スリーブアウトに混じって「ユニクロ」風なパンツの棚陳列が組まれていた。店舗の印象は陳列技法も含めてひと昔前の量販店のカジュアル平場そのもので、巨大企業の戦略業態とは思えない凡庸なものだ。
 価格は公表通り「ユニクロ」の2〜3割安。開店目玉には390円のTシャツ、490円のジャージパンツ、590円のチェックネルシャツ、果ては90円のソックスやショーツ、キャミソールまであったが、レギュラー商品は総じて『安かろう悪かろう』というのが実感。デニムやチノのパンツ、一部のブルゾンこそ「ユニクロ」と大差ないのに安いと評価出来るものの、ニットやカット、アウターは値段相応の代物。縫製こそ目立った破綻は見られなかったが、素材は今時こんなものがあったのかと思うほど粗雑なものが多く、ニットやウール混アウターは70年代の「Kマート」を思わせる程チープ。外部機能活用OEM調達ゆえのコストの高さと低価格設定ゆえか、今時信じられないような低品質商品が目立っていた。しかしパターンや色は「ユニクロ」より若々しく、『貧困な30代ニューファミリーのための最低価格カジュアル店』という性格を実感させた。
 低所得ニューファミリー層の多い南行徳のダイエーにはピッタリかも知れないが、全国市場でポジションを確保できるとはとても思えない。もっとましな品質と感度を大差ない価格で提供するカジュアルチェーンも少なくないし、『意外にファッショナブル』とパブを仕掛けているものの、感度や鮮度では量販店のヤングカジュアル売場にとても適わない。ベーシックからちょいトレンドまで、団塊ジュニア向けからギャルOL向けまで様々な品質/仕様/面の商品がごちゃ混ぜされた店で、中国市場の流通在庫を掻き集めたアウトレット業態にしか見えなかった。

レディス/メンズ/キッズのズレ

 商品を個別に見ていくと、レディスでもメンズでもアイテムによって品質に大差があり、キッズは「ユニクロ」とほとんど差が無いほど高価格で品質も近い。同業態の中の差とは言えないほどキッズの乖離は大きく、これなら「ユニクロ」で買った方がよほどバラエティもあって確実だ。
 レディスのターゲットは団塊ジュニアを中心に一部ギャルOLまで。面はワンウォッシュのナチュラルからちょいキレイ目ナチュラル、フィットもニート中心にちょいソフトコンシャスまでにまとまっている。価格もロワーポピュラーからアパーポピュラーと公式通りにまとめられているが、謳われているような感度や鮮度はごく一部のアウターにしか見出せない。
 綿コールやポリ系の中綿アウターは完成度も高くデザインのバラエティもあるが、アクリルウール系コートは素材がチープでパターンのバランスも悪い。綿起毛ジャケットは2,990円と割安感は在るものの、デザイン/素材とも凡庸で魅力を欠く。デニム系/綿系ボトムはパターンは凡庸だが完成度が高くバリュー感があるものの、ウール系ボトムは価格相応に留まる。ニット/カットはアクリル多用素材のチープ感が堪え難く、『安かろう悪かろう』そのもの。今時、こんな商品に市場性があるとは思えない。
 メンズのターゲットは団塊ジュニアを中心に、一部ベーシックアイテムはやや上までカバー。面はワンウォッシュのナチュラル(ワーク/ミリタリー系)からちょいキレイ目ナチュラル(トラッド系)、フィットはニート中心にまとまっており、複数業者からのOEM調達にしてはまとまりがある。価格もロワーポピュラー中心に一部アパーポピュラーまでにまとまっている。「ユニクロ」よりはトレンドを反映しているものの、大手カジュアルチェーンに較べると感度/鮮度とも数段劣る。
 ジャケットは総じてシャツ仕立てだが、パターン/フィットは「ユニクロ」より若向け。綿素材は低価格商品の水準に達しているがウール系素材はチープ。一部のブルゾンは価格以上の感度と品質が評価される。ジーンズやワークパンツは素材/加工とも価格以上の水準で買い得感があるが、バリエーションが限られる。綿スラックスはアダカジ味が強く、客層にそぐわない。Tシャツ/スウェットはまずまずだが、ニットやベーシックカットソーは素材がチープでデザインも古臭い。総じて本人買いの感度には遠く、主婦の代理購買の域を出ない。
 キッズもナチュラルからキレイ目ナチュラルで、ストリート感覚のルック訴求はレディスやメンズより感度が高いが、価格も一部アイテムを除いて「ユニクロ」並みのアパーポピュラーと一格高い。縫製はアイテムで差が在り、素材はデニムやツイルを除けば低品質なものも見られる。ボーイスのシャツやパンツは「ユニクロ」と大差ないが他では割高なアイテムも目立ち、この業態でキッズを買うメリットはほとんど見出せない。

「g.u.」に存在意義はない

 一部アイテムを除いては『安かろう悪かろう』で割高感があり、鮮度も期待外れ。良品質品は「ユニクロ」よりお値頃だが、処分値引きを乱発する「ユニクロ」の実勢価格を考えれば「g.u.」の存在意義はほとんどない。コストの高い外部機能活用OEM調達では、よほど高回転/高消化率を実現しない限り「ユニクロ」より割安になるはずがないが、現状の鮮度と品質ではそんなマジックは成立しようがない。高回転OEM調達のマジックが成立している109世界のキーMDである『定形ルックのバラエティ回転陳列』もまったく見られず、価格を超えるバリューが実現される見込みはまったくない。
 「g.u.」を見た顧客の『これでは安手の「ファミクロ」じゃないか』という声が命運を暗示させるほど、「g.u.」の船出は準備不足とビジネスモデルの薄弱さを露呈するものとなった。「ファミクロ」と言うより、調達体制が整っていなかったローカルチェーン時代の「ユニクロ」を思わせる。
 ファーストリテイリング社のゲノムは『価格を超える高品質』であり、如何なる価格帯でも外してはならない成功原則のはず。私は99年発刊の『SPAの成功戦略』で「ユニクロ」より低価格の新業態開発を提じたが、それはあくまで「ユニクロ」と同じ自社開発型OEM調達によるベーシック高品質を売る業態であり、「g.u.」のような中途半端に鮮度と回転を狙った外部機能依存型OEM調達業態ではない。
 『下流社会』が言われる今日の日本だが、こんなに『安かろう悪かろう』なカジュアル業態が必要とはとても思えない。どんなに生活が苦しくても夢のある商品を夢のある店で買いたいのが庶民の本音のはずで、高品質な商品を低価格で提供するビジネスモデルを確立しないままスタートした「g.u.」の離陸は極めて難しい。今日の日本社会にはこんな「g.u.」は不要で、本来のゲノムに基づいてゼロからビジネスモデルを組み直さない限り一千億構想は幻に終わるのではないか。



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