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小島健輔の最新論文

販売革新2007年3月号
『チェーンストアにおける店長の役割』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


 チェーンストアのマネジメントは本部主導を原則としながらも、店長機能が重視されるサイクルが循環的に訪れる。それは本部の戦略/戦術/体制整備と現場運用の相克のサイクルであり、業態の発展途上期や衰退期では店舗主導が強まる傾向が見られる。そのようなチェーンストアの体質から店長機能を考えてみたい。

チェーンストア・マネジメントと店長機能

 チェーンストアは大量生産に対応する大量流通のシステムとして20世紀初頭に形成され、第二次大戦後に米国陸軍のロジスティクス体系を取り込んで確立された工業的体制であり、そのオリジンからプッシュアウトな中央集権体質を持っていた。その中枢は多数の店舗を制御する本部であり、店長は本部の指示を忠実に実行する端末と位置付けられていた。それはトップマネジメントとマザーコンピュータによって総てが統制されるという1950〜60年代米国のマネジメント思想を体現したものでもあった。
 そのような思想に基づけば店長機能の多くは標準化/マニュアル化可能なものとされ、人的対応はレイバーコントロールとイレギュラー案件、地域の人間関係に限られていた。それが可能だったのは、全米各地域に根ざしたレップとラックジョバーの存在も大きかったと思われる。その体制は高度に工業化され、今日でもウォルマートに生きている。
 米国でも80年代以降は市場の多様化が急速に進み、中央集権的な体制では効率的な運営が困難になって行った。トップマネジメントによる統制思想こそ変わらなかったものの実務現場の個別対応は拡大し、情報体系もクライアントサーバ型の分散処理へと変化していった。90年代以降のインターネットの普及がそれを加速した事は言うまでもない。
 このマネジメント思想の変化に伴ってチェーンストアにおける店長機能も「考える端末」へと進化し、顧客満足の極大化へとノードストロムのような逆ピラミッド型のマネジメント思想も台頭した。
 今日のチェーストアシステムは本部の統制/供給と現場のテクニカル対応という両面から成っており、本部の仕組む戦略/戦術や供給はもちろん、現場の判断や技術的対応によっても業績が左右される。本部の仕組む戦略やシステム、戦術や供給が市場にマッチしていれば現場の運用は限定されるが、マッチしていないと現場の運用を拡大せざるを得ない。それが本部主導と現場主導の循環となって現れる。その循環の中で店長機能をどう位置付けるかが問われるのではないか。

店長の個別市場対応

 チェーンストアにおける店長には、本部の仕組む計画/統制の忠実な遂行と個別市場の現実に対応する自主的な運用という両面が求められる。前者が個別市場にマッチしていれば店長はその遂行に集中できるが、ミスマッチであれば個別の判断と技術的な運用に力を割かなければならない。業態の発展途上期や衰退期に現場運用が肥大化するのはそのような事情による。結果としての成果が問われる以上、店長は本部の戦術と供給を個別市場にマッチするよう何らかの修正を加える必要がある。
 その主軸は営業催事と販促、品揃えと供給だが、前者の個別市場対応が当然とされる一方、後者は年度/半期ごとの枠組み調整に留まり、個別商品の配分は本部のディストリビューター判断に依存するのがほとんどだ。
 ディストリビューターは総量消化を追求すれば傾斜配分(売れる店に片寄った配分)に流れるし、個別店舗対応を重視してもタイプ分けに留まるしかない。SPA事業者はともかく、量販店衣料部門では相当に大雑把な配分が行われている。個別店舗の品揃えバランスをスーパーバイザーやコントローラーが取るにしても、カテゴリー別ディストリビューターの配分を最適にコントロールするのは至難の技だ。
 個別店舗の店長や売場主任が配分を最終修正するのが理想で、ウォルマートでもそのプロセスが遂行されている。そこまでは至らないものの、店長や売場主任の事前人気投票をディストリビューターの配分に反映するという手法は多くのチェーンストアで見られる。  個別店舗の責任者が最適な品揃えに責任を持つという考え方を徹底すると、彼等が本部の品揃えリストに数入れするという方法に至る。ユニクロのスーパースター店長制度や一部のSPAで行われている疑似FC制度がそれだが、相当に熟練した店長でないと精度向上を本部供給の混乱が相殺してしまう。熟練を要するとは言えコンビニエンスストアでは確立した手法となっているから、支援の枠組みがしっかりしていれば他のチェーストアでも定着は可能と考えられる。衰退期に入って存亡が問われる量販店衣料部門などでは決定的な突破口となる可能性がある。

売場在庫運用の現場対応

 店長や売場主任の裁量や技術が最も活きるのは売場在庫運用であろう。消化回転を高めて売場の鮮度を維持し、値入れの目減りを最小に抑えてバリューを実現するのは売場在庫運用の精度に他ならない。
 売場在庫運用は本部が消化状況と投入予定を掴んで適確に指示する必要があるが、本部指示といっても群としての運用であって品番/色までのグルーピングや棚割変更をいちいち設計する訳にもいかないから、どうしても限界がある。例え本部指示が適確に行われたとしても、個店毎の消化進行や在庫内容は異なるから、現場には何らかの判断とテクニカルな対応が必要になる。
 衣料品を例に取るなら、在庫内容はもちろん季節進行やトレンド変化も掌握しなければならない。今売れる切り口を判断し、アイテムや素材/カラーのグルーピングを再編しレイアウトを組み直さなければならない。旬のコーディネイトとカラーリングを掴み、魅力的なルックと色配列を表現しなければならない。それには日々の情報収集と基礎技術の研鑽が不可欠だ。大枠は本部が指示するにしても、現場に情報と技術がなければ実現度は低くなる。それは食品でも生活雑貨でも大差ないだろう。
 現場に信頼できる技術が存在するチェーンストアは限られる。それはシステムや体制と言うより、現場の企業文化といった性格が強い。同じ企業でもSM部門にはあって衣料部門にはないという事もある。
 本部指示を適確に実行できる事のみを求めて行くと、現場は考えず工夫しなくなる。AからZまでをマニュアル化してもZの先が必ず発生する。マニュアルをしまむらのように毎月、追加/修正していく体制がない限り、なんらかの現場判断/運用が必要になる。しかも、マニュアルが完璧なほど、考え工夫する人材は育ち難くなる。ならば考え工夫する習慣を組織として醸成した方が良い。そう考えたのがかつてのイトーヨーカ堂であり、それが失われつつある今日もその体質はローカル量販店や韓国のEマートに脈々と受け継がれている。
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 中央統制と現場運用の綱引きはチェーンストア永遠の課題と言うべきだが、現場の足腰が弱体では本部指示の遂行精度は低く留まらざるを得ない。システムやマニュアルでスタンダードを固める一方、それ以上の工夫を追求して行く組織文化を醸成する事が足腰の強いチェーンストアを築く事になる。店長機能はそのような視点から考えられるべきであろう。



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