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小島健輔の最新論文

日経MJ 2008年3月31日付掲載

『ユニクロの幻影を捨てよ・・・ファーストSPAこそ本命』

(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

SPA(製造直売小売業)というとユニクロやギャップをイメージする人が多いが、それらは多様なSPAの中では極めて古典的な存在だ。SPAの本質は製販を一貫する効率的な流通システムであり、ブランドメーカーの直営店戦略と小売業のオリジナル戦略の両面から発展して来た。前者の古典的なモデルがDCブランドであり、後者の古典的モデルがギャップやユニクロと言えよう。古典的と言ったのは、どちらも企画〜生産段階のバリュー創造に軸足を置いたプッシュ型であって必ずしも市場と適合せず、効率的な流通システムとは言い難いからだ。
 ブランドメーカーのSPAはバリュー創造と市場対応を両立すべく、シーズン立ち上げのオリジナル企画と販売動向対応のQR企画を組み合わせるオゾック・モデルやアンタイトル・モデル、フランドル・モデルなどに進化していった。小売業のSPAはメーカー別注方式や仕様書発注方式などの試行錯誤を経て90年代以降、AMS(企画開発機能を持ったアパレル受託生産業者)を活用するファーストSPAへと進化して行った。AMSはデザイナーやパターンナー、生産管理者を抱えて企画提案するOEM業者であってエレクトロニクス業界のEMSに相当し、そのメジャー化によって小売業のSPA化は飛躍的に容易となった。
 ユニクロやギャップが圧倒的なバリュー創造を志向して長射程・大ロット・ローコストな調達を行うプッシュ型で消化率や商品回転が低いのに対し、ファーストSPAは引き付けた短射程企画と小ロット多頻度投入で市場対応するプル型で高消化率・高回転が期待出来る。109発祥のウィークリーキャリー型(月曜に企画して金曜には店頭投入する超クイック型)は年間24回転以上という生鮮商法だし、6週射程で毎週、新規商品を投入するポイントでも年間13.2回転/交叉比率794をたたき出している(07年2月期)。
 世界で最も進化してレイヤードが当たり前になった日本の消費者を相手にプッシュ型のインダストリアルなSPAを志向するのはリスクが大きく、最速・最短で市場に対応するファーストSPAの方が遥かに市場に適合している。玄人たる職業デザイナーより素人たる消費者の感性が先行し、様々な得意分野を確立した多数のAMSが便利なサービスを提供する今日、カリスマ販売員や読者モデルが顧客代表として企画しAMS活用で最速・最短に市場に応えるファーストSPAこそ適合モデルであり、職業デザイナーが長射程で企画し大ロット・ローコストで調達するインダストリアルSPAを志向するメリットは極めて薄い。ユニクロやギャップのような古典的モデルの成功は極めて例外的なものであり、新興企業のほとんどはファーストSPAというのが現実だ。にも拘らず、量販店などは未だ古典的なインダストリアルSPAの呪縛に囚われている。
 最速・最短で市場対応するファーストSPAと圧倒的バリュー創造のインダストリアルSPAの両方の強みを実現したのがZARA(インディテックス社)とH&Mであり、先行したZARAに加えて今秋にはH&Mも上陸する。SPAのグローバルウォーズを勝ち抜くのは誰か、業界を超えた関心が集まっている。
SPA比較


※誌名のないバックナンバーは「ファッション販売」です。

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