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小島健輔の最新論文

商業界2009年1月号

『SC出店の最新状況』

(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

急増する退店とSCの破綻
 近年の大量開発に改正都市計画法施行に伴う駆け込み開発が加わって競合が加速度的に激化し販売不振に陥るSCが急増する中、ガソリン高騰が商圏縮小に追い討ちをかけ、秋以降は米国発の金融恐慌が実体経済に波及して消費が急激に冷え込み、テナントの撤退やデベの倒産が相次いでいる。そんな中、今秋冬期はイオンレイクタウンや阪急西宮ガーデンズなど巨大SCの開業が続き最後のSC開業ラッシュとなったが、来年以降はSC開発は急減して既存勝ち組SCの増床リモデルが主役となっていく。
 テナント企業の出店意欲も既に冷え込み始めており、当社SPAC研究会加盟95社の08年8月末までの1年間の出店数はピークの前年から23%減少。対して退店数は36%増加して過去最多数を数え、退店率(退店数÷出店数)は54.2%と4年ぶりに50%を超えた。過去4年間の無謀な大量出店、SC間競合の深刻化、消費の急激な冷え込み、定期借家契約満了の到来ラッシュ、等を考えれば来期の退店急増は不可避で、退店率が100%を超えた98年当時の悪夢再現は必至の情勢だ。
 08年度の退店を検証してみると特定のSCに集中。中でも静岡パルコ、イオン大垣SCは07年開業、イオンモール武蔵村山ミュー、イオン発寒SCは06年開業と開業2年足らずでの退店で、新設SCの不振が浮き彫りになっている。
 販売不振や開発の失敗でSCデベの破綻も続出しており、5月の名古屋港イタリア村とミキシング(ガーデンモール木津川、ビッグホップガーデンモール印西など)、7月のゼファー(那須ガーデンアウトレットの共同開発者)、8月のアーバンコーポレーション(アーバンテラス茶屋町など)に続き、10月にはリーマンブラザース破綻の余波でさくらシティ日立が閉鎖に追い込まれている。販売不振からテナントの退店が続出して営業継続が危ぶまれている破綻予備軍SCは全国で数十ケ所に及んでおり、不況の深刻化で破綻に至るSCが続出する事は避けられない。
 恐慌下で消費が凍結し次々とSCが破綻して行く中、敢えてSCに出店すると言うのなら、よほど適確なSC選択とシビアな採算計画が求めらるのは当然だ。そこで有力テナント企業の出店事例から最新の出店環境を検証してみた。

最低保証付歩合/定期借家契約がリスクに
  SPACメンバーの08年度(07年9月〜08年8月)新規出店中、最低保証付歩合契約が7割近くを占め、単純歩合契約は約3割、完全固定契約は2%弱と極めて例外的。最低保証付歩合契約は5年前の26%強から4年前の41%弱、3年前の50%弱、2年前の64%強、昨年の71%強と急速に主流化したが、販売不振と買手市場化で今年はわずかながら単純歩合契約が押し戻した。最低保証付歩合契約では初年度販売予算が最低保証ラインを下回るケースも1割近く見られるが、端境月などで売上が落ちれば高率な家賃負担となってしまう。
 定期借家契約も大型商業施設では常識化しており、5年前が54%弱、4年前が74%強、3年前が8割弱、2年前が83%強、昨年が88%弱、今年はほぼ90%と急速に主流化した。中でもGMS/SM核大型SCでは適用率が96%強、駅ビルも同93%強と完全に定着。既存店でも契約更新時に定期借家契約に切り替えるデベロッパーが多く、もはや旧借家契約は例外的となっている。
 定期借家契約では満了時、デベロッパーの意向次第で退店を余儀無くされるが、実際、今年度の退店事例では定期借家契約終了を理由に退店した店舗の7割はデベに肩を叩かれている。加えて、定期借家契約店舗の約31%が契約期間3年以下で、内装除却損のリスクが指摘される。

保証金/敷金は再低下すれど内装費は上昇継続
 保証金は90年代以降、急速に低下し、今年度の出店事例では最も高い駅ビルでさえ平均52.9万円と、保証金/敷金という名目はともかく近年は基準家賃の10ヶ月分という水準に着地している。
 昨年は大都市の商業地価反騰を受けて駅ビル/ファッションビルはもちろん、郊外大型SCにまで家賃上昇が波及し、下がり続けて来た保証金/敷金も家賃に比例して12.3%も上昇したが、不動産バブルがはじけだした今年はダウンタウンSC店舗の保証金/敷金は6%上昇に鈍化し、郊外SC店舗のそれは9.3%も低下した。郊外SCでは景気後退下の開発ラッシュでリーシング難となった事も影響していると思われる。
 ここ数年、坪当り内装費の上昇が顕著で、今年の出店事例平均では坪当り46.5万円と前年から10.8%も上昇。ダウンタウンSC店舗平均は51.0万円と前年から10.4%上昇、郊外SC店舗平均も39.8万円と同2.6%上昇しており、とりわけファッションビルは平均12.8%、アウトレットモールは平均11.1%と上昇が目立った。
 資材や施工人件費の上昇に加え、平均店舗面積が6.5%縮小した事、アップスケール化が進んだ事(とりわけアウトレットモール店舗で著しい)が要因と思われる。ちなみに、内装監理費を負担している出店事例は約64%で、約36%の店舗は負担を回避している事に注目したい。

不動産費率と坪当り不動産費相場
 売上対比の実質不動産費率(家賃/共益費/共同販促費/内装償却費/金利の合計)は、テナント店で最も低いアウトレットモールが17.4%と前年から0.9ポイント改善、続く郊外大型SCは20.2%と同0.8ポイント悪化、郊外小型SCは低販売効率ゆえに21.8%とかえって高コストで前年からも1.1ポイント悪化している。ダウンタウンで最も低コストなのが駅ビルの20.0%だが前年からは0.5ポイント悪化、ファッションビルは20.5%と前年から0.4ポイント改善した。郊外大型SCと駅ビルは販売効率がほぼ倍違うが不動産費もほぼ倍違い、結果としての売上対比不動産費率はほとんど変わらない。
 これらはテナント出店のケースであり、歩率の高い百貨店インショップでは郊外店でも平均不動産費率は29%近く、ダウンタウン店では34%に達する。
 テナント店の坪当り不動産費月額は販売効率の高い駅ビルが約84500円と最も高く、ファッションビルが約64300円で続く。意外と販売効率が高いアウトレットモールが約58800円、ダウンタウンのGMS核SCが約51900円。郊外大型SCは約40900円と4万円を超え、郊外小型SCは約31400円と3割方安いが販売効率はそれ以上に低い。郊外大型SCも坪月4万円超という時代になっており、それなりの販売効率が出せないと利益は望めない。歩率の高い百貨店インショップでは郊外店でも約53400円、ダウンタウン店では138500円と法外な負担となる。この相場はデベロッパーの評価の高いSPACメンバーの平均値であり、一般のローカルテナントはこれより割高な水準を覚悟する必要があろう。

テナント企業のデベロッパー評価
 今年のデベロッパー評価ランキングではルミネが段突の評価で初のトップとなり、チェルシージャパン、イオンモール(旧イオンモール系)がベスト3を占めた。この御三家に続くのが三井不動産、小田急電鉄、イオンモール(旧ダイヤモンドシティ系)、三井不動産のアウトレットモール、東京圏駅ビル開発、東急モールズデベロップメント、東神開発で、ここまでがベスト10と評価された。
 逆に低評価だったのが大和情報サービス、大和リース、ロック開発の大和系小商圏SCデベロッパー。西友、イズミ、イトーヨーカ堂、ユニーなどの量販店系デベロッバー、双日商業開発、東京建物も評価が低い。
 最近の不振を反映してか郊外SCデベの評価が下がった一方、駅ビル系/アウトレットモール系デベの評価が高まった(ファッションビル系デベは評価が分かれた)。各社の評価は各社の開発した個別SCの営業成績とほぼ一致しており、実績がシビアに評価されている。逆に言えば、高評価デベロッパーの開発するSCは成功率が高いという事にもなろう。

09年以降開設/増床予定大型SCの評価
 当社は過去十余年に渡って数百のSCを検証し、売上予測の精度を高めて来た。その最新手法に基づいて、09〜10年度開設/増床予定主要16大型SCの売上と販売効率を予測し、10月2日開催のSPAC月例会で発表した。評価の高かったSCはららガーデン長町(ザ・モール仙台長町に接続)、湘南シークロス、みなとみらい21−28街区プロジェクト、増床やリニューアルでは西神プレンティ(リニューアル)、ニッケコルトンプラザ(増床リニューアル)など。避けた方がよいSCも紙面では公表出来ないが5施設に昇った。







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