『アウトレットブーム再来か』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔
三井不動産のアウトレットパーク入間が鳴り物入りで開業して話題を集め、今秋には三井不動産とチェルシージャパンが共に仙台に、09年初夏にはチェルシージャパンが茨城県阿見に開業を予定と、7物件が開業した00年以来のアウトレットモール開設ラッシュが到来している。国内のアウトレットモールは三井不動産のアウトレットパークが入間を加えて7、チェルシージャパンのプレミアムアウトレットが6など主要なものだけで24を数え、小型のハイブリッドモールまで加えれば30を超えると言われる。その売上総額は07年で約3900億円、08年は約4500億円に達すると見られるが、ブーム再来でさらに拡大していくのだろうか。テナントの商品供給は拡大に対応出来るのだろうか。
ラグジュアリー系はコーチやクロエ・ランジェリーなど8店に限られるが(御殿場は41店)、国内ブランドはユナイテッドアローズやビームスなどのセレクト系からローズバッドやダブルスタンダードクロージングなどの駅ビル系、エゴイストやソードフィッシュなどの109系、ローカルモーションやビーチサウンドなどのサーフ系までしっかり揃い、定番のアウトドア/スポーツ系も充実している。少なからぬブランドがアウトレット品に加えて高鮮度で手頃な専用企画品も用意しており、周辺の大型SCや地方百貨店を脅かす充実ぶりだ。
ラグジュアリーブランド集積を中核に非日常的ショッピングを訴求する超広域型アウトレットモール( チェルシー系がその典型)に対し、身近な国内ブランド集積を中核に日常性も訴求するライフスタイルセンター的側面も持った、近い手頃なアウトレットモールと位置付けられよう。その意味ではアウトレットパークの多摩南大沢や幕張の延長上に位置するもので、超広域型を志向するジャズドリーム長島とは路線が異なる。それだけにアウトレットパーク入間は郊外大型SCのモールに近似した役割もあり、周辺商業施設に対する影響も大きいと思われる。
2層オープンモールとは言え通路はフルに屋根でカバーされており、空調はともかく風雨は十分しのげる。駐車場の配置も解り易く3,200台が用意されているが、週末は入庫待ちが避けられないだろう。難点は入間IC側に隣接したコストコの入庫待ちラインで、片側2車線しかない16号線では互いの入庫待ちラインを仕分けるのは不可能だから週末は大混乱が必定だ(手前の信号から裏口へ誘導するしかない)。
三井不動産は初年度売上を260〜280億円と見込んでおりアウトレットパークでは長島(来期は増床効果で300億円を超える)に迫るが、アウトレット売上首位の御殿場プレミアムアウトレット(推定600億円強)にはほど遠い。ラグジュアリー系が揃う御殿場とは単価の差が大きいゆえと思われる。
好評アウトレットモールはいずれもメトロポリス周辺か人気リゾート地に位置しており、ローカル立地での成功例は見当たらない。その意味でも、今秋のチェルシージャパンと三井不動産の仙台進出が注目される。
アウトレットモールの好不評を左右する第一条件はブランド揃えの充実度で、販売力評価とテナント集積度は明確に相関している(図表4)。リゾート地などの超広域型アウトレットモールではラグジュアリーブランドの集積度が最大条件となる。ブランド揃えが最大条件なら、将来の増床が可能か否かも問われよう。ライバルを押し退けて商圏を拡張するには増床によるブランド揃えの拡充が不可欠だからだ。これが第二の条件。チェルシー系のアウトレットモールは広大な敷地を確保して何次もの増床が可能なよう計画しているが、三井不動産系の多くは敷地が小さく増床余地が限られる事が指摘される。
第三の条件が広域からアクセスし易い立地であり、高速ICに近接する事が不可欠だが、ICからの距離が短くても慢性的に渋滞するようであれば集客を阻害してしまう。アクセスと並んで重要なのが駐車の容易性で、十分な駐車台数と出入りの容易さが問われる。これが第四の条件だ。これらに較べれば、フードサービスやアミューズメントの充実は絶対的な条件ではないようだ。
ラグジュアリー系ではそんな事は行なわれていないが、セレクトショップや国内ブランドではアウトレット用のお手頃企画商品を加える事が多い。主要アパレルテナントのアンケート回答によれば、アウトレットストアの品揃えに占める旧シーズン品は平均55%、今シーズンの処分品が32%で、アウトレット専用企画品も5%強含まれている。
アウトレットストアの品揃えを年間に渡って充実させるには3割程度は専用企画品を加える必要があるが、それでは本末転倒という見方もある。国内アパレルでもアウトレットを独立採算事業部として運営するケースでは専用企画品の比率が高くなる傾向が見られるが、顧客にとっては旬の今シーズン品(専用企画品)が割安に入手出来る事はむしろメリットで、積極的に店頭で訴求しているストアもある。
アウトレットストアは売れ残り品を処分するのが目的だが、開設したアウトレットストアは店舗として顧客の期待に応えざるを得ない。よって、初期は売れ残り品の処分に徹していても、営業を継続する限りは必ず専用企画品が肥大して行く。大手セレクトショップの一部では明らかにその傾向が見られる。処分品が品揃えの過半を割るといった事態にならない限り、専用企画品は必要なものと考えられる。
では08年で4500億円程度と推計されるアウトレット売上は何処まで増加するのだろうか。アウトレット店舗を展開する主要アパレルブランドの総売上対比アウトレット売上比率は現状で平均7.3%程度だが、最近の販売低迷で9%程度まで上昇すると推計される。それを活かすと5550億円という数字になるが、アウトレットを展開していないブランドも多い事から、新規の参入も加えて11年頃に6000億円強に達すると推計される。年率11%弱で伸びるという計算だが、08年度の伸びはアウトレットモールの新増設もあって15%を超えるから、堅い数字と見るべきであろう。
ではアウトレットモールが急増するかと言うと、恐らくそうはならない。米国の例を見ても、アウトレットモールは96年の329ケ所をピークに減少に転じ、05年には225ケ所まで落ち込んでいる。その間、総賃貸面積はほとんど変化していないから、大型化と小型モールの淘汰が進んだ事を示している。米国のアウトレットモールはより都市圏に近付いて大型化し、構成もアップスケール化して高級ブランドが増え、レストランやアミューズメントも充実していったが、絶対数は減少していった。
現在の日本で売上が好調と言われるアウトレットモールは15〜16ケ所しかなく、販売が低迷しているモールは大型モールの増加とともに駆逐されざるを得ない。メトロエリアを複数のアウトレットモールが分け合って共存するには1ケ所当り300万人以上(超広域型は600万人以上)が必要な事から見ても、全国で30ケ所強が限界と思われる。新たな大型モールが開設されただけ周辺の小型モールが淘汰されて行き、最終的に現在とほとんど同数の30ケ所強で市場を分け合う事になる。ラグジュアリーブランド集積を中核とした超広域型はその内、最大16ケ所、残りは国内ブランド集積を中核とした身近なライフスタイルモール的性格になると思われる。









